株、不動産の次は「国債が買い」と殺到

中国の国債を買い進めている、主な主体の一つは個人の投資家だ。それに加えて、わが国の農業協同組合に似た形態の“農村商業銀行”による国債投資も進んでいるようだ。

今回、国債バブル膨張のプロセスは、中国の株式や不動産などリスク資産の価格下落があった。不動産価格の下落で、個人投資家などは国債を購入し始めた。年初来、中国政府は30年など超長期の国債の新規発行を増やした。政府の国債発行増加は、今後の資金調達コストの低下を見込んだ行動とも解釈できる。国債価格の上昇は間違いないと思い込む個人は増え、価格上昇に勢いがついた。

過去、中国の金融市場では、株式や不動産、ビットコインなどの仮想通貨の価格が短期間のうちに高騰したことがある。その経験を頼りに、“今度は国債に利得のチャンスがある”と思い込む個人・機関投資家は増えただろう。群集心理(一人で行動するよりも大勢と同じことをすることに安心する心理)は高まり、個人や中小の銀行などが相場に参戦した。こうして国債バブルが膨張しているといった見方が増えた。

過熱した不動産バブルが思い出される

投資資金が国債に集中する問題点は、これまでの中国の経済メカニズムの行き詰まりだ。リーマンショック後、中国政府は投資を増やして高い経済成長を実現しようとした。重要な役割を果たしたのは、地方政府の土地譲渡益だった。

中央政府は、経済対策の一環で不動産開発を促進した。その実行役だった地方政府は、不動産デベロッパーに土地の利用権を譲渡し歳入を増やした。政府がマンション建設を奨励していることは、「住宅価格の上昇は間違いない」との過度な価格上昇期待を国民に植え付けた。それによって不動産市場でバブルが発生した。

投機熱が高まって、一時、需要を上回るマンションなどの建設が進んだ。重機から鉄鋼など幅広い分野の生産、雇用・所得機会は増えた。過去のピーク時、中国の不動産関連需要はGDPの29%程度に達したとの試算もある。

地方政府は土地の譲渡益を用いて産業補助金を国有・国営・有力民間企業に支給し経済成長目標を達成した。産業補助金を支えにEV、太陽光パネル、スマホなどの分野で中国企業の競争力は高まった。