兵庫県庁の男性幹部職員が斎藤元彦知事への告発文を残し自殺した問題で、斎藤知事に辞職を迫る論調の報道が続いている。ジャーナリストの小林一哉さんは「静岡県の川勝知事もメディアの圧力に耐えかねて知事職を放り出した結果、静岡県政はリニア問題でますますの混乱を招いた。斎藤知事を今辞職に追い込むことは、兵庫県政の闇を明らかにすることにつながらない」という――。
記者会見する兵庫県の斎藤元彦知事=2024年7月24日午後、県庁
写真=共同通信社
記者会見する兵庫県の斎藤元彦知事=2024年7月24日午後、県庁

斎藤知事へ「辞職」を迫るマスコミ、副知事

兵庫県の斎藤元彦知事(46)へ辞職を迫る厳しい論調の報道が連日のように続いている。

パワハラ疑惑、おねだり疑惑など斎藤知事の7つの違法行為等を告発し、兵庫県議会の百条委員会に証人として出席する予定だった元県幹部のAさん(60)が自死した。

Aさんは「一死をもって抗議する」「百条委員会を最後までやり通してほしい」という趣旨のメッセージを残していた。

そのメッセージと「おねだり」をしたとされる肉声が公表されてから、斎藤知事への風当たりがますます強くなっている。

Aさんの死の直後、片山安孝・副知事(64)が県政の混乱を招いたとして、7月末で辞職すると表明した。

その際、5回にわたって斎藤知事に辞職を促したが、拒否されたことも明らかにした。

それだけでなく、斎藤知事が「嘘八百」などと述べた初動対応を誤り、県職員や県議らとのコミュニケーションが不足していると批判した。

「辞職を巡る攻防」でも川勝知事は辞めなかった

いくら斎藤知事と親密な仲とは言え、副知事が知事に辞職を迫り、知事の対話能力に問題があると批判したことに強い違和感を覚えた。

静岡県では、ことし5月、川勝平太知事(76)が任期を1年以上残して、突然、辞職した。

それ以前には、静岡県議会が辞職勧告決議を突きつけ、さらに不信任決議案が1票差で否決されるなど、県議会で何度も辞職を巡る攻防があった。

それでも川勝知事に辞める選択肢はなかった。2人の副知事も知事を守り、支えた。それが本来の副知事の役割である。

斎藤知事の場合、Aさんが議会関係者、警察、マスコミ等へ告発文のかたちで情報提供した。伝聞調のあいまいな内容が多かったため、百条委員会で特別調査することになった。事実関係はこれから明らかにされるはずだ。

当然、9月県議会でも、斎藤知事への厳しい責任追及が始まるのだろう。