斎藤知事の疑惑にまとわりつく「政治的なニオイ」

2021年7月の兵庫県知事選は、5期20年という長期にわたった井戸県政の評価が焦点となった。

井戸県政を真っ向から否定した斎藤知事が、井戸知事の後継とされた金沢・前副知事を25万票の大差で破って当選した。

金沢氏は自治省出身のキャリア官僚であり、1998年から4年間、兵庫県の総務部長、企画管理部長などを務めた。熊本県副知事などを務め、2010年から11年間、井戸知事を副知事として支えた。

井戸知事は後継者として、金沢氏を副知事に迎えたのだろうが、そこに斎藤知事が割って入った。大阪府で圧倒的な人気を誇る維新の会が擁立して、「変化」を求めた兵庫県民は斎藤知事を選んだ。

考えればわかるが、Aさんを含めて井戸知事のシンパと見られる職員は数多く、また都合15年間も兵庫県に務めた金沢氏と一緒に仕事をした職員も数多いだろう。

当然、井戸前知事や金沢前副知事は、ふだんから斎藤県政について親しい職員から事情を聞いていただろう。Aさんもその1人だったのだろう。

前回選は保守分裂で自民党は割れたが、次回選は金沢氏でまとまるのかもしれない。兵庫県のゴタゴタの根っこからは、政治的なにおいがプンプンしてくる。

政治的な力がさらに加わり、斎藤知事への非難や糾弾が続くから、斎藤知事がどこまで持ちこたえられるのかが焦点である。

知事が任期途中で職を辞す影響は大きい

川勝知事の辞職表明の背景には、メディアなどの激しい“攻撃”に耐えられなくなったことがある。

斎藤知事も、辞職を迫るこれだけ激しい“攻撃”にさらされれば、疲れ果てて、不本意ながら辞職してしまうかもしれない。

たくさんの報道カメラ
写真=iStock.com/suriya silsaksom
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筆者は「いま斎藤知事は辞めるべきではない」と進言したい。

斎藤知事が辞めれば、調査権限を有する百条委員会の役割は形骸化され、真実を追及する姿勢までも失われてしまう。川勝知事が不適切なタイミングで突如辞職し、リニア問題で多くの「負の遺産」を残したのはこれまで述べてきたとおりだ。

斎藤知事を留まらせ、兵庫県政の闇の部分を少しでも明らかにすべきだ。

斎藤知事は知事という身分のまま百条委員会で証言してほしい。