仕事ができる人はどんな工夫をしているのか。トヨタグループで働いてきた中小企業診断士の森琢也さんは「仕事が速い人は整理・整頓する能力が高い。トヨタグループでは『整理ができない人=仕事ができない人』だと評価されていたため、独自の整理・整頓術が共有されていた」という――。(第1回)

※本稿は、森琢也『トヨタで学んだハイブリット仕事術』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

乱雑に書類の置かれたデスク
写真=iStock.com/SilviaJansen
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1日平均20分を無駄にしている

ある文具メーカーの調査によると、日本のビジネスパーソンは紙書類を探す行為に、平均で週に約1.7時間を費やしているそうです。オフィスの机の上が散らかっていて、いざ必要な書類を探そうとしてもすぐに見つからない。さらに紙書類だけでなく、パソコンのデータも散乱していて、すぐに欲しいデータが取り出せない……。

1週間で1.7時間ということは、1日に平均すると約20分、紙書類を探すために使っている計算になります(週5日勤務で計算)。さらに、パソコン上のデータ探しも加えると、多くの方が毎日30分以上、探しものに時間を費やしているのではないでしょうか。ということは、探しものをしないで済むようになれば、「毎日30分以上、早く仕事が終わる」ことになります。これは年間でいうと80時間も探しものに費やしているということになります。

どうすれば、この「探しもの」に費やす時間や労力のムダをなくすことができるのでしょうか。方法は簡単で「整理・整頓」して、不要なものを捨てるのです。ただし、このやり方にもトヨタ流があります。

STEP1 トヨタ流「整理・整頓」

一般的に私たちが日常で使う、自宅の掃除や片付けを行う際の「整理・整頓」と、トヨタで使われている「整理・整頓」は異なっていて、入社当時私も大きく戸惑った経験があります。そもそもみなさんが自宅の掃除や片付けを行う目的はなんでしょう?

清潔感や衛生を保持したい、足の踏み場や寝るスペースを確保したい、友達が遊びに来るから見た目を整えたい、などではないでしょうか。一方で、トヨタの「整理・整頓」の目的にはお金(時間や労力)の節約が加わります。従業員がものを探す時間も労務費というコストが発生していますし、ものが見つからずに買い足す場合も、つくり直す場合もコストが発生するからです。