捨てることは判断力を鍛えることにつながる

②第三の選択肢〈有期保留〉を駆使する

ただし、捨てる基準を定めてもその判断基準が適用できないものや、この判断基準で捨ててよいだろうかと不安に思うこともあると思います。要否の判断に迷って答えが出ないときは、第三の選択肢として「有期保留」を駆使することをおススメします。

有期保留とは、2週間や1カ月というように期間を決めて保留し、その期間が終わったときに一度も利用しなかったら「捨てる」という判断をすることです。有期保留を駆使し、既定の期間が過ぎたら、結局必要だったのかどうか振り返りを行いましょう。

【捨てる基準】
●「再購入やつくり直した場合に500円以下で済むかどうか」
●「データ容量が5GB以上かどうか」
●「最終版が別にあるかどうか」
●「“念のため”と思って用意したものかどうか」
●「電子化できるかどうか」
●「ないと顧客や取引先に迷惑をかけるかどうか」

振り返りを行うことで、「このジャンルのものは、有期保留しても結局捨てる」「この手のものは、1カ月様子を見たほうがいい」といった具合に、みなさんの判断基準が磨かれていきます。有期保留は、ただの判断先延ばしではなく、判断基準を磨き上げる大切なプロセスなのです。

整理とは、とにかくいらないものをどんどん捨てていくこと。「捨てる」という作業を通じて、じつは「判断力」という能力の向上も図れます。「何かを探す」というムダな時間や労力を大幅に削りながら、「判断力」を磨き、スッキリ整った仕事環境を手に入れるという、一石三鳥を狙ってみませんか?

【まとめ】
「捨てる」作業を通じて「判断力」を磨く

綺麗に収納すればいいわけではない

前項では「何かを探す」というムダな労力や時間を削るための「整理と整頓」のうち、整理にフォーカスしたカイゼンについて説明しました。ここでは「整頓」について一緒に考えていきましょう。

「整頓」と聞くと、本棚にカチッと書籍が並んでいるような、スッキリ収納されている様子をイメージされる方も多いと思います。ところがトヨタでは違います。トヨタでは整頓=セッティング、というイメージが近いと感じます。

ポイントは、まず、「必要なものは10秒で取り出せるように」という意識を持つことです。わずか10秒ですから、「目をつぶっていても取り出せる」レベルです。自分の仕事にとって本当に必要なものは、目をつぶっていても手を伸ばせば素早く取り出せるというくらいに収納場所にこだわり、すぐに使える状態にセッティングしておくことが大切です。

トヨタでは「ただ綺麗に収納するな」と教えられます。例えば、一見整然と、キチッと書籍が詰まっている書棚ほど、本をうまく取り出せないことがあります。これでは見た目はよくても実用的ではありません。資料や重要なデータは、パッと取り出せて活用できることに意味があります。もし必要なものを探したり取り出したりするのに3~5分以上かかるようなら、「セッティングの仕方そのもの」を見直しましょう。

整理されたオフィスの棚とデスク
写真=iStock.com/Charday Penn
※写真はイメージです