新型コロナの感染拡大や「迷惑動画」騒動を受け、回転寿司チェーンの多くでは、寿司をレーンに流すことをやめ、注文制にシフトしている。しかし、大手の中でくら寿司だけは「回転寿司」を維持している。いったいなぜなのか。ライターの鬼頭勇大さんが取材した――。(第1回)
くら寿司
撮影=プレジデントオンライン編集部

なぜくら寿司だけが「回転寿司」を続けるのか

回転寿司といえば、その名の通りに寿司が店内のレーンをくるくると回っているのが醍醐味だった。それがここにきて大きな転換点を迎えている。

2023年に一部の来店客がいたずらをした動画がSNSで拡散し、衛生面の不安が広がったことで、各社は「回転」を止める動きに走ったのだ。

そんな中、いまだに回転寿司のレゾンデートルともいえる「回転」を堅持しているのが「くら寿司」だ。同社の辻明宏氏(広報宣伝・IR本部 広報部 マネジャー)によると、各社が回転レーンへ寿司を流すのをやめている一方「社内では、寿司を流すのをやめることは一度も議論されたことがない」と言うほどの、こだわりようだ。

回転寿司業界のトレンドを見れば、一連の騒動がある以前より「回す」から「届ける」へのシフトが顕著だったといえる。つまり、レーンに流れているおすすめの商品やスタンダードな商品を選んでもらうのではなく、客席にあるタブレットなどから客が注文、そのメニューを届けるスタイルだ。

こうしたスタイルは、客の手に取られない商品を減らせることから廃棄率が低く、従来と比較して効率も良いように思える。数ある外食業態の中でも、特に低価格がひとつのウリである回転寿司では、見過ごせない要素だ。

それでもなお、くら寿司が「回転」寿司を続けられるのはなぜなのだろうか。背景には、同社の強みともいえる、さまざまな「システム化」があるようだ。