定位置を定めるだけでなく、目印をつくる

それでは取り出しやすいセッティングにするためのコツをご紹介します。

①ホームポジション(定位置)を示す

新人でも何がどこに何個あるのかがわかるようにするには、ホームポジションを示すことが効果的です。これは、この工具の置き場所はここ、このデータの保管場所はここというようにルールを決めるだけでは不十分です。

例えば、工具や文房具の置き場所なら、白線でその工具の形状と置く向きまでがわかるようにシルエットを描いて示し、工具をその形の通りに置くようにします。こうすれば、新人でもどのような形の工具を何個、どの位置にどの向きで置けばいいのかが一目瞭然です。この「姿置き」は実際にトヨタグループの製造ラインで実践されているカイゼン策です。

②エクスプレス・ラックをつくる

エクスプレス・ラックとは、素早く取り出せる収納箱のイメージです。私のコンサル先のあるメーカーでは、製造現場の方は全員もれなく、寸法をはかるためのメジャーを腰にぶら下げていました。みなさん、メジャーを頻繁に使うからだそうです。私自身は、パソコンのショートカット機能やワードやエクセルのクイックアクセスツールバーを用いて、よく使うファイルや機能はすぐにアクセスできるようにしています。

特に、一時的に利用頻度が高まる道具やデータは、期間限定でも特別な位置に配置するといいでしょう。

ファイル名は「日付・件名・バージョン」で管理する

③グルーピングする

トヨタでは「綺麗に収納するな」と言われると紹介しましたが、時には、大きさや形状がバラバラになってもかまわないので、「よく一緒に使うもの同士をひとまとめにして、すぐに使える状態」にします。

例えば、「蛍光ペンとハサミと定規」といったセットを一つの箱の中に入れておくのもよい方法です。見た目は綺麗でなくても、よく同時に使う3つを一度に取り出せるので、一つひとつ取り出して使い終わったらしまうといった作業のムダも削減できます。取り出しやすい収納とは、ただ取り出しやすいだけではなく、いかにムダ(繰り返し作業)をなくすかという視点で考えることも大切です。

④検索フックを仕込む

データを扱うときには、ファイル名や階層など保存に関するルールを決めるだけではなく、「すぐに探せる・取り出せる」ようにしておくことが大切です。パソコンのデスクトップが散らかっている、フォルダやファイル名の名づけルールがない、という個人や組織をいまだに多く見かけます。これでは、いざというときに必要なデータを素早く探して取り出すことができません。

パソコンにデータを保存するときには、フォルダやファイル名のつけ方を「日付・件名・バージョン」の順番にするといった統一ルールを定めて、同時に「親フォルダ→子フォルダ→ファイルの3ステップ」で必要なデータにたどりつけるように階層を整えましょう。

ノートパソコンのファイルを整理する人
写真=iStock.com/ipuwadol
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