県は「門前払い」から態度を軟化したが…

藤島残土置き場については、いまのところ、県の専門部会で議論すら行われていない。それでも、JR東海は藤島残土置き場計画で県の理解を得ようとしてきた。

6月12日に島田市で開かれた国のリニア静岡工区のモニタリング会議で配布された資料の中に、藤島残土置き場について、JR東海と県の協議の進捗を示すものがあった。

国のリニア静岡工区モニタリング会議
筆者撮影
国のリニア静岡工区モニタリング会議

川勝知事が辞職したあと、JR東海は4月24日、26日、5月21日の3回にわたって、藤島残土置き場について県と協議したようだ。

4月24日に要対策土の盛り土に関する確認書の記載方法や添付書類について県が説明、26日にはJR東海が提示した確認書案について、県が内容を確認することになった。

5月21日の打ち合わせで、県から「盛り土の永久管理に関する不明な点を説明するよう話があった」とある。

これまで適用除外の要件を満たさなかった藤島残土置き場について、適用除外とすることを踏まえて、県がJR東海を指導していることが明らかになった。

これについて、県担当課は「個別事案について説明できない」としているが、JR東海の求めには対応している。

これまでの「藤島残土置き場計画を認められない」と門前払いしていた川勝前知事時代の状況とは大きく違うのかもしれない。

しかし、モニタリング会議後の囲み取材で、森副知事は「現在の計画を認めるわけではない」とした。

他の公共工事は「適用除外」が認められているのに…

県は、要対策土について南アルプスから搬出するようJR東海に要請している。

ただし、いちばん近くの処理場まで100キロ程度離れていることもあり、発生土を運搬するのは経済的にもトラックの往来による環境影響などの点からも合理的ではない。

JR東海は遮水型の二重シートを活用して要対策土対策を取る計画だ。

近くには井戸水等の利水状況がないこと、河川からの高さ(約20メートル)が十分あり、増水による影響が極めて小さく、排水管理が十分実施できる計画であるなど万全の封じ込め対策を取るとして、県に適用除外となるよう理解を求めている。

JR東海は「いろいろな公共工事の中で、トンネル工事を行い、道路事業などでは適用除外が認められている。リニア工事も他の公共工事同様に適用除外を認めてもらいたい」などと要請している。

それでは、なぜ、県は適用除外として認めないのか? 本当に盛り土条例の適用除外の要件を満たしていないのか?