春の「診療報酬改定」が話題
この春の「診療報酬改定」が話題になっています。診療報酬とは、誰かが医療機関を受診した際、医療保険者から医療機関に支払われるお金のこと。日本は全員が医療保険に加入して保険料を支払うことで互いの負担を軽減する「国民皆保険制度」をとっているため、個人の窓口負担は1〜3割、残り7〜9割を医療保険者が負担します。さらに子どもの場合は市区町村が年齢に応じて無償化したり助成金を出したりしているので、ほぼ無料で医療にかかれます。
保険診療では「どういう診療や検査をしたらいくら」という診療報酬額が決まっているので、どこの医療機関で診療を受けても同じ金額です。ちなみに保険診療でないものを「自由診療」といい、これは各医療機関が価格を決めて患者個人が10割負担するので診療報酬改定とは関係ありません。
この診療報酬改定は、2年ごとに行われます。2年前にはニュースで「医師の収入となる診療報酬」と説明されていて、私は誤解を招くのではないかと危惧しました。というのも、診療報酬は「医療を行うために必要なすべてのもの」に使われます。医師・看護師・看護助手・検査技師・医療事務員などの人件費、検査・手術の費用、医薬品、注射器・包帯などの消耗品、点滴・吸入などの医療器材、レントゲンやCTなどの医療機器、建物の維持費・管理費などを賄うために使われるのです。たとえば「新聞社社員の人件費となる購読料」と言うことはありませんね。「医師の収入となる診療報酬」という説明は不適切なので、今では使われなくなったのでしょう。
「往診サービス」の終了と縮小
さて、実際に新しい診療報酬が適用されるのは、通常より2カ月遅れの6月からですが、早くも影響が表れました。以前、子育てを助けてくれると賞賛された「往診サービス」が終了・縮小されることになったのです。
医師が患者さんの自宅を訪れる「往診サービス」は、新型コロナウイルスが蔓延した際に急増しました。この緊急時の往診は、事前に計画を立てて行う訪問診療とは違うものです。その中でも、子どもの往診を多くしていた「みてねコールドクター」「ファストドクター」は数多くのメディアで取り上げられて称賛され、ペアレンティングアワードやグッドデザイン賞を受賞しました。
子どもが小さいと、急な体調不良が頻繁に起こるものです。夜間や休日だと、どこにかかったらいいかわからなかったり、保護者も同時に体調が悪くて受診が大変だったりすることがあるでしょう。また休日診療所に行くと、長い待ち時間があって困ったりもします。だから「往診サービスのおかげで助かった」という声があがり、メディアや賞を贈った団体は称えたのでしょう。