新しい健康診査支援事業
今年1月、こども家庭庁と文部科学省と厚生労働省が、新しい「健康診査支援事業」をスタートさせました。いまだに日本のほとんどの地域において自費で行われている乳幼児健診である「1カ月児健診」「5歳児健診」に対して国が助成金を出し、全国的に3年以内に公費で実施されるようにするというものです。
そもそも、乳幼児健診とはどういうものでしょうか。乳幼児健診は、正確には「乳幼児健康診査」といって、子どもの心身の健康状態を把握して健康増進に役立てたり、病気を早期に発見して治療したりすることを目的とした健診です。現在は「母子保健法」に基づき、市区町村に実施義務のある「1歳6カ月児健診」「3歳児健診」が行われています。そのほかに「3〜6カ月児健診」「9〜11カ月児健診」が行われている自治体も多いですね。
なお、鳥取県のすべての市町村、神奈川県川崎市や群馬県藤岡市のように、すでに5歳児健診を行っている地域もあります。医療機関を個別に訪れるのではなく、保健所などで一斉に行う集団健診が多いようです。事前にアンケートを配り、心配な場合に来てもらうという形式もあります。今後、次々に市町村で5歳児健診が始まるでしょうから、お知らせが来たらぜひ受けましょう。
古くからある乳幼児健診
こうした健診事業は、国民全員が保険に入る「国民皆保険制度」ができる以前から市町村主体で行われてきました。1937年に保健所法ができ、保健所による乳幼児保健指導が始まり、1939年には乳幼児健診がスタート。当初は戦前・戦後の子どもの発育や栄養の改善を目指し、次いで股関節脱臼など疾病の早期発見と治療、脳性まひや視覚・聴覚異常の発見と療育へと目的が増えていきました。
その後は、肥満や虫歯の予防、社会性の発達の支援、親子関係や親のメンタルヘルスを良好に保つための援助、虐待の未然防止なども行われています。
現在では国が委員会を作って、日本中どこでも同じように受けられるように「乳幼児健康診査身体診察マニュアル」や「乳幼児健康診査事業 実践ガイド」というものを出しています。そして、以前から続く健康課題のスクリーニングだけでなく、育児支援の視点が必要となっていて、医師・歯科医師、保健師、看護師、助産師、歯科衛生士、管理栄養士・栄養士、心理職、保育士などの多くの職種が関わっています。健診で問題が見つかれば、そうした専門家につないで、問題解決へとつなげるのです。