毎年、夏休みが終わりに近づくと、「子どもの様子に注意しよう」という声が増える。それは、9月1日に自死する子どもが多いためだ。小児科医の森戸やすみさんは「休みの間も生活リズムは変えず、何か問題を抱えていれば早めに対処を。また不登校になってもダメではないということも伝えてあげてほしい」という――。
日本の高校のファサードの建物
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9月1日は子どもの自死がもっとも多い

夏休みの終わりが近づくと、子どもの元気がなくなったり、憂うつそうになったりすることがありますね。また近年、夏休み明けすぐは特に、子どもの自死に注意が必要だといわれています。どうしてでしょうか。

それは児童・生徒の自殺者数が、9月に飛び抜けて多いからです(※1)。児童というのは小学生、生徒というのは中学生以上を指します。厚生労働省の「18歳以下の日別自殺者数」によると、新学期の始まる9月1日にとりわけ多いことがわかります。これは今だけでなく過去40年を通しての事実です。

大人であっても、夏休みなどの連休を楽しく過ごしたあとの仕事は憂うつになりがちです。仕事や職場で何らかの問題を抱えていればより一層、気が重くなりますね。子どもも同じです。学校で何らかの問題があると、休み明けには嫌な気持ちになるでしょう。とりわけ子どもはまだ世界が狭く、家庭と学校だけしか居場所のないことが多いので、学校がつらいと大人以上に苦しいといえるでしょう。だからこそ、自死が増えてしまうのです。

※1 厚生労働省「学生・生徒等の自殺の分析

学校に行きたくない理由はさまざま

では、子どもが学校に行きたくない理由はなんでしょうか。

大人から見ると、友達とうまくいっていないのでは、ということを最初に考えがちです。確かに仲の良い友達がまったくいなかったり、いじめられていたりすると学校に行きたくなくて当然でしょう。仲良しの友達がいても、一部の子にからかわれたり、嫌なことを言われたりすると通えなくなる場合もあります。

次に学校の勉強や運動についていけないと、嫌になることがあります。そのほか集団行動が苦手、担任の先生と合わない、自分ではなく他の人が怒られているのだとしても大声や叱責などを聞くのがつらい、給食が食べ切れない、起立性障害がある、発達障害がある、発達障害の二次障害があるなど、本当に子どもによってさまざまです。

学校に行きたくない理由は一つではなく、いくつも重なっているのかもしれません。また本人に尋ねても言語化できなかったり、親には心配をかけたくなかったり、恥ずかしいという気持ちが先だったりすると話せないこともあるでしょう。本人にも理由がわからないことさえあります。