診療所や病院の看板には「小児科」「内科」などの診療科が標榜されている。小児科医の森戸やすみさんは「小児科を標榜していても、必ずしも小児科専門医がいるとは限らない。年齢や症状によって適切な医療機関を選ぶためにも、ぜひ専門医制度の仕組みを知っておいてほしい」という――。
小児科の看板
撮影=プレジデントオンライン編集部

診療科を標榜する際のルール

診療所(クリニック)や病院が、「小児科」「内科」「外科」などの診療科を表に出すことを「標榜」といいます。標榜は「厚生労働省のルール」に則って行われるもの。よく医療機関の看板やWEBサイトなどに書かれていますね。

ただ単に内科・外科というだけでなく、内科系だったら○○内科、外科系だったら○○外科といったように病気の部位や病気を組み合わせて標榜することもできます。例えば「呼吸器内科」「循環器内科」、「脳外科」「整形外科」というような診療科を見かけたことがあるでしょう。「糖尿病・代謝内科」のように病名と診療科がセットになったものもあります。

また「児童精神科」「男性泌尿器科」というように患者さんの性別や年齢を組み合わせたり、「ペインクリニック科」のように医学的処置を標榜することもできます。これは患者さんが受診したいときに、どこの医療機関に行ったらいいかわかりやすくするためのものです。

標榜イコール専門医ではない

ただし、標榜している診療科は、各診療所や病院の「うちではこんな病気を診ます」という意思表示に過ぎず、専門医がいるかどうかを保証するものではありません。外看板やWEBサイトに「小児科」と書いてあるからといって、その医療機関に必ず「小児科専門医」がいるとは限らないのです。

さて、みなさんは専門医制度についてご存じでしょうか。これは日本専門医機構によって設けられた制度で、行動目標に「国民だれもが、標準的で安心できる医療を受けることのできる制度を目指します」とあります。医療機関にかかりたい人、患者さんが安心して医療を受けられるように、医師の質を担保する制度なんですね。

専門医になるためには、医師が日本専門医機構や各学会から専攻医登録サイトで専攻医として登録し、決められた医療機関で働きながら3〜5年間の専門研修プログラムを受け、症例報告などを提出し、さらに専門医試験に合格して認定を受ける必要があります。

小児の専門的な経験と知識を持った人が「小児科専門医」、骨や筋肉なら「整形外科専門医」というように、診療を行う臨床医が持っている基本的なものです。患者さんと一対一で会うことのあまりない「病理医」にも専門医資格があります。