虫歯の予防・治療はどのようにするのがベストか。日本歯科大学付属病院臨床准教授で歯科医師の多保学さんは「虫歯を予防するには、虫歯の進行を抑制する役目のある自分の唾液の量や力を知ることだ。また本格的な治療をして歯を長持ちさせるためには、口の中が清潔で、歯肉が健康な状態であることが必要だ。そのため長期的に患者さんのことを考えている歯科医院は、すぐに虫歯を削ることはなく、治療に入るまでにある一定の検査やケアを行っている」という――。
※本稿は、多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。
なぜ良い歯医者は虫歯治療までに2カ月かけるのか
虫歯が痛くて歯科医院に行った場合、すぐに患部を削って銀歯やセラミックなどの詰め物や被せ物をする治療が行われるのが一般的です。こうした治療は1〜2回程度の通院で済むため、患者さんにとってはありがたいかもしれません。
しかし、長い目で見た場合、すぐに治療することは推奨できません。もちろん虫歯があれば、まず痛みを取って虫歯が進行しないようにするための応急処置は必要です。
しかし、詰め物や被せ物をするなどの本格的な治療をして歯を長持ちさせるためには、口の中が清潔で、歯肉が健康な状態である必要があります。
例えば、歯周病で歯茎がブヨブヨしていたり、歯茎から血が出たりするような状態では、銀歯やセラミックなどの正確な型を取ることはできません。そのため当院では、初診時に応急処置を行った上で、口腔内の写真撮影、口全体のレントゲン撮影、虫歯と歯周病の検査をして、歯と口の中の状態を確認します。
そして次の診療の際に、検査結果をもとに患者さんごとにカスタマイズした虫歯と歯周病の予防プログラムを提案します。また、口の中をきれいにするため、歯石の除去を行い、さらに患者さん自身が歯磨きなど口腔内のケアを正しくできるように指導します。
口の中を清潔に保つには、患者さん自身によるケアが欠かせないためです。一定期間、患者さんにきちんと歯磨きをしてもらい、口の中の状態が改善し、歯茎の炎症が治まるのを待って、それから本格的な虫歯の治療を開始します。