歯周病になったら、どんな治療をすればいいか。日本歯科大学付属病院臨床准教授で歯科医師の多保学さんは「歯周病の治療で歯を残すことだけを考えるのは大きな間違いだ。歯を残すことを優先することで歯周病菌や炎症を放置してしまい、隣の歯にも歯周病が広がってしまう可能性がある」という――。

※本稿は、多保学『0歳から100歳までの これからの「歯の教科書」』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

青い背景におもちゃの木の歯
写真=iStock.com/dore art
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歯周病になった際の最善の治療法

「え! 歯周病専門医なのに歯を抜くのですか?」

そんな疑問を抱く方がいますが、これはよくある患者さんの勘違いです。歯周病では、歯を残すことが最善の治療法とは限りません。

歯肉炎の段階であれば、歯垢(プラーク)や歯石を除去することで歯茎は元に戻せますが、歯周炎に進み、顎の骨が溶けてしまっている場合、骨を元に戻すことはできません。

例外として、一定の条件下であれば、骨を移植して増やす「歯周組織再生療法」によって骨を再生できる可能性はあります。この歯周組織再生療法は熟練した歯科医師が行う外科処置になります。手術前や手術後の管理、手術中の臨床的判断、使う材料など非常にシビアな手術です。

手術を行う歯科医師の熟練度が成否を大きく左右しますので、まさに歯周病専門医にのみできる処置だと確信しています。軽度・中度の歯周炎の場合は、まず炎症を取り除き、正しく歯磨きができるように指導します。

その上で、バイオフィルムや歯石を除去し、歯周病菌を減らして歯周組織の環境を整えます。このように、それ以上歯周炎が悪化しないよう、いかにメンテナンスしやすい環境にできるかが、歯周病専門医が治療において最も重視する点です。

歯周ポケットが深すぎて、歯科衛生士によるクリーニングでは歯垢(プラーク)や歯石を除去しきれない場合には、歯周外科処置を行い、歯茎を切開して目視できる状態にして、縁下歯石を全て除去します。また、重度の歯周炎の場合は、抜歯を選択することもあります。