さまざまな感染症が大流行中
さまざまな感染症が大流行中です。2024年末に国立感染症研究所が発表した「感染症発生動向調査週報」によると、なんといってもインフルエンザが31.8万人と最多で、新型コロナウイルス感染症も3万5000人弱、感染性胃腸炎が1万5000人、溶連菌感染症(A群溶血性レンサ球菌咽頭炎)が7000人になっています(図表1参照)。
新型コロナウイルス感染症の流行は終わったと考えている人が多いのですが、そんなことはありません。この時期に急な高熱が出て、のどが痛くなって咳や鼻水が出たら、約1割が新型コロナだと考えてください。インフルエンザか新型コロナなのかは、見た目だけで判別ができないため、検査が必要です。
また胃腸炎や溶連菌感染症も増えています。溶連菌感染症には抗菌薬が必要ですが、先月、「ジェネリック薬1錠は飴より安い価格でつくらされる…日本で薬が深刻な不足に陥っている理由 物価は上昇しているのに薬価は低下の一途」という記事でお伝えしたように、抗菌薬が不足しているせいで困っている患者さんが多いようです。さらに胎児に影響のある伝染性紅斑(リンゴ病)も多いので、妊婦さんは要注意。そのうえ、去年の春先から、子どもに多い手足口病がまだはやっています。手足口病は「この一年で2回目です」とか「3回目です」という子もいるほどです。
お子さんが体調不良で小児科を受診する際、インフルエンザや新型コロナ、水痘(みずぼうそう)などの疑いがある場合は隔離が必要なので、可能であれば事前に電話等で、または受付で伝えてください。診察時には、身近になんらかの感染症にかかっている人がいたり、なんらかの感染症が流行していたりする場合はお教えください。速やかな診断の助けになります。
今話題の「ヒトメタニューモ」とは
そのほか、今、中国で爆発的に増えているという「ヒトメタニューモウイルス感染症(human metapneumovirus:hMPV)」が気にかかっている人も多いかもしれません。一部に「新型コロナのように、中国から日本に上陸してパンデミックが起こる」と危機感を煽るような記事があるため、怖く感じている人もいるでしょう。しかし、ヒトメタニューモは、国立感染症研究所の調査や定点把握疾患には入っていません。
それは日本にまだ入ってきていない感染症だからではなく、2001年に発見されたばかりの新しいウイルス感染症ですが、むしろありふれたウイルスだからです。欧米や日本の調査によると、10歳の時点でほぼ100%の人が抗体を持っている――つまりかかったことがある感染症です。少なくとも50年前からヒトの間で流行を繰り返しています。
このヒトメタニューモは、冬から春にかけて感染者を増やすウイルス。風邪くらいの症状で終わることもあれば、気管支炎や肺炎を引き起こしてしまうことも。RSウイルス感染症と症状が似ていて、2歳くらいの子どもがかかると、熱が続いて鼻水や咳が出て、だんだんゼイゼイがひどくなることが多いです。6歳未満であれば、保険診療内で検査キットを使って調べることができます。インフルエンザや新型コロナのような抗ウイルス薬がないので、ヒトメタニューモウイルス感染症だとわかっても、安静にして対症療法を行うしかありませんが、特に怖い感染症ではありません。ワクチンはありませんから、他の感染症と同じような予防対策をとりましょう。コロナウイルスが新型コロナウイルスになったように、ヒトメタニューモウイルスが変異したとしても、基本的な感染対策は同じです。