HPVワクチンの接種率が高い国では、子宮頸がん撲滅も遠い未来の話ではない。ところが、日本では不正確な情報が流布された結果、HPVワクチンの接種率は低いままで、子宮頸がんの発症率は高い。小児科医の森戸やすみさんは「HPVワクチンの接種率を上げていく必要がある。1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性は今年度中は無償でのキャッチアップ接種が可能なので、ぜひ検討を」という――。
ワクチンを受けた少女
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キャッチアップ1回目は9月までに

2024年3月末日で、HPVワクチンのキャッチアップ接種が終了することをご存じですか? HPVワクチンは、子宮頸がん予防のために定期接種として実施されています。2価のHPVワクチンはがんの原因になりやすい16、18型の2種類のヒトパピローマウイルスを予防し、4価、9価のHPVワクチンはそれに加えて「尖圭コンジローマ」や16と18型以外が起こすがんなどに対しても予防効果があります。

本来、定期接種の対象は小学校6年生から高校1年生までの女性です。でも、このキャッチアップ制度によって、来年3月までは平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)で、過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない女性も無料で接種できます。

日本ではHPVワクチンを間をあけて合計3回受けるため、まだ1回も接種していない場合は今年9月に接種を開始しないと3月までに完了することができません。予診票をなくしてしまっていても再発行が可能ですから、保健所に問い合わせましょう。定期接種の実施は市町村単位なので、住民票がある人ならば無料で受けられます。

厚生労働省ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~

デンマーク保健当局の素晴らしさ

現在、私たち医師が感じているのは、HPVワクチンを受けに来る人には外国籍の人の割合が多いということです。これは日本人の接種数が少ないからでしょう。HPVワクチンは、海外では一般的なワクチンであるにもかかわらず、日本では「副反応が大きく怖いワクチン」という誤解がいまだに残っています。そのため日本ではキャッチアップ接種も通常の定期接種も、あまり接種率が上がっていません。

2007年にHPVワクチンの接種を開始したデンマークでも、日本のように副反応が多いという誤解から接種率が下がったことがありました(※1、2)。当初、デンマークではHPVワクチンの接種率は95%だったのに、新聞やテレビといった主要メディアが否定的な報道をしたのです。そのせいで2016年には接種率が半分程度まで下がりました。

しかし、デンマークの保健当局の努力によって、わずか1年で接種率は回復。保健当局は、がん患者団体などと協力しながら、迅速にソーシャルメディアを中心としたキャンペーンを行ったのです。その後、デンマークでは男女ともに公費でHPVワクチンを受けられるようになり、2022年の接種率は78%となっています。

※1 朝日新聞「HPVワクチン、控える動きは海外でも 回復したデンマークの場合は
※2 BuzzFeed「HPVワクチンの接種率激減を1年足らずで回復したデンマーク 日本と何が違ったのか?