保育園に入った子どもはよく風邪をひく。いつまで風邪を繰り返すのか。佐久総合病院佐久医療センター・小児科医長の坂本昌彦さんは「フィンランドの研究では、月平均の病欠日数がピークになったのは保育所入所から2カ月の時点で、その後減少し、9カ月を過ぎる頃には落ち着いていた。これは小児科医の実感としても納得できるものだ」という――。

保育園に入るとよく風邪をひくもの

新学期が始まりました。育休明けで保育園デビューなど集団生活を始めるお子さんをお持ちの保護者の方もいらっしゃると思います。今回は入園にあたり、知っておいていただきたいことをまとめました。

まず、保育園や幼稚園は子どもたちの集団生活の場です。これまで集団生活をしていなかったお子さんが入園すると、多くの病原体にさらされ、毎週のように風邪をもらってきて熱を出すお子さんも少なくありません。これから仕事を頑張ろうと思った矢先に、「熱が出たのでお迎えを」という園からの連絡が重なると、保護者も心が折れそうになるかもしれません。また、「自分の復職が早かったから子どもに負担をかけているのでは」と悩んだり、「こんなに何度も風邪をひくなんて、うちの子は免疫が弱い病気でもあるのだろうか」と心配になったりするかもしれません。でも、実はよくあることです。

次の図は年齢層別の1人当たりの呼吸器疾患の年間罹患数を示したものです(1)(図表1)。

年齢層別の一人当たり呼吸器疾患の年間罹患数
画像=参考文献1より

このことから1~2歳のお子さんは年間5~6回は風邪をひいていることがお分かりいただけるかと思います。「よく風邪をひくのはうちの子だけ」ではないのです。ただし、3~4歳で4~5回/年、5~9歳で3~4回/年と、成長に従って風邪をひく回数は減っていきます。

病欠日数は入園2カ月がピークという研究結果がある

そう言われても、保育園デビューしてから頻繁に熱を出すお子さんのケアをしながら、こういった状況がいつまで続くのか途方に暮れる方もいらっしゃるかもしれませんね。

ここで、1827名のお子さんを2年間フォローアップし、風邪症状や病欠日数と保育施設入所との関連を調べたフィンランドの研究をご紹介したいと思います。この研究では、月平均の病欠日数がピークとなったのは保育園入所2カ月の時点で、その後減少し、9カ月を過ぎるころには落ち着いたと報告しています(2)(図表2)。

保育園の開始に関連する保育園グループごとの月あたりの病欠日数の平均値
画像=参考文献2より

われわれ小児科医の実感としても、おおむね入園後1年くらいすると風邪を繰り返すパターンも落ち着いて来る印象があり、この研究結果は納得できるものです。