「早めに風邪薬を飲めば早く治る」わけではない

外来をやっていると、「今は軽い症状だけれど、悪くなる前に早めに風邪薬をもらいに来ました」とお話される保護者の方は多いです。早めに治るなら早めに受診させたくなるのは当然ですよね。子どもに早く楽になってほしいという願いは親の愛情でもあります。では、風邪薬は早めに内服するほど早く治るのでしょうか。

実は風邪のほとんど(9割以上)はウイルスが原因です。これらのウイルスを直接退治する薬は残念ながらありません。したがって風邪症状で受診された場合、処方される薬は去痰薬(痰を出しやすくする薬)や鎮咳薬(咳を抑える薬)などの感冒薬や解熱剤になります。これらはあくまで起こった症状の程度を緩和するものです。つまり早めに飲むほど早く効く(治る)わけではなく、今ある症状を(少しだけ)楽にしてくれる薬です。

本人がぐったりしていたり水分があまり摂れなかったりする場合には早めの受診をお勧めしますが、そうでなければ焦って病院に駆け込まなくても大丈夫です。熱が高いと頭に障害が残るのではと不安になる方もいらっしゃいますが、そのようなことはありませんのでご安心ください。まずはゆっくり体を休ませてあげてください。休んで体力が回復すると、風邪の治りも早くなります。

マスクをつけた子ども
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

咳は10日後でも半数の子どもに残っている

子どもの咳が長引いて心配、と相談される保護者の方も少なくありません。多くの方は1週間くらいで治るのでは、と思っていらっしゃるかもしれませんが、子どもの咳に関しては、10日後でも50%の子どもに残っており、2週間後でも25%に残っていたとの報告(5)もあります。子どものカゼは、治るまで10日以上かかることも珍しくないと知っていると、気持ちが少し楽になるかもしれませんね。

「前の日に熱が出ていたけど、翌日解熱している、よし登園できそう!」

そう思いたくなる気持ち、よく分かります。仕事だってできるだけ休みたくないですよね。ただ、ここで知っておいていただきたいのは、前日に熱が出ていた場合、翌朝熱が下がっていても一時的な可能性が高いという点です。治っていなくても朝はいったん解熱していることが少なくありません。園に行かせても、結局午後からまた発熱して再び呼び出し、という経験をお持ちの方も多いかと思います。それなら前日夜に熱があるときは翌日は休むと決めた方が、連日呼び出しというストレスも軽減でき、子どももしっかり休めて体力が回復し早く治りますのでお勧めです。