貧困が見えすぎるアメリカと見えにくい日本
――投資をする人が増えると資産を持つ人と持たない人の格差がますます広がっていくと思いますが、現状、日本の格差についてどう思いますか。
【パックン】僕は以前、書籍『逆境力』の中で貧困問題についても書きました。そこで指摘したのは、隠れ貧困が日本の大きな問題になっているということです。反対にアメリカには見えすぎる貧困があります。これも問題ですが、職業や住んでいるエリアで「おそらく家計が厳しいんだね」と推測がつく。日本の場合は、職業や住んでいる地域ではわからないですよね。
中間層が分厚いのが、日本の強みです。ただ、日本財団によると7人に1人の子どもが貧困家庭で暮らしているそうです。この割合は絶対に高すぎると思う。日本も改善の余地があるのは間違いないです。ただ、アメリカのようにフェラーリに乗っている人がいる一方で、自転車さえ買えない生活をしている人がいるような格差はない。その点は評価しましょう、と思っています。
インフレへの転換で資産を持つ人と持たない人の格差が広がる
――エミンさんは日本の格差は広がっていくと思いますか。
【エミン】格差は話題になっているけど、年間にどのくらい稼いでいるかを見ると、日本の格差は広がってはいない。たとえば年収1000万円以上の人の割合は大きく増えていませんし、逆に一番下の層も大きく増えていないので日本は安定しているといえる。
ただし、世の中がインフレになってきたにもかかわらず日銀は金融緩和を続けているので、資産を持っている人と持っていない人の差はどんどん拡大していると思う。
【パックン】その通り。
【エミン】当然ながら、インフレは生活を直撃するから、資産を持っていない人にとっては、ものすごく厳しい。給料収入しかないからね。
【パックン】そういう人は賃貸物件に暮らしている人が多いでしょ。不動産を買った人はインフレで賃金が上がれば、ローンを返しやすくなるけど、賃貸の人は賃金が上がるかわからないけど、確実に家賃が上がるはずだから、どんどん生活が苦しくなる。
【エミン】だから、今後は格差が拡大するかもしれない。いま日本で資産を持っているのは、年齢が高い層が多いので、若い人はこれから資産をつくらなければならない。その人たちをインフレが直撃して、税負担が増えて、社会保険料の負担が増えていく。これは日本の社会、政治、経済の不安定要因になる可能性はあると思う。かつ日本では働いている層、納税者の権利を主張する政党がないから、若い人の声は反映されないでしょ。