保険でまかなう医療費がかさむ

しかし、実際に往診サービスを利用した患者さんの話を聞くと心配な点が多々あり、以前「子どもが夜間に具合が悪くなった…小児科医が解説『オンライン診療』『往診サービス』は頼りになるか」という記事を書きました。往診に来るのが小児科医でないうえ、できる検査が限られていたり、処方が適切でなかったりするケースがあったからです。

そして保護者が支払う金額はないか少なかったのですが、保険でまかなう医療費はかさみました。これも大きな問題です。往診の料金に加え、緊急往診加算、夜間・休日往診加算、深夜往診加算などが診療報酬についたからです。これらは小児患者の保護者には請求されないことから意識されなかったのでしょう。

SNSの投稿を見ると、往診サービスの利用者は子どもが多かったようです。子どもはよく熱を出したりするものですが、ほとんどの場合の発熱は翌朝の受診で問題ありません。もともと救急外来を受診する小児も、ほとんどが検査や入院をする必要のない軽症であることは、よく知られています。そういった緊急性の低いケースで往診をするのは医療費がかさむ上、本来望ましい形態ではありませんし、持続可能な医療行為でもありません。

電卓を使用して計算している医師の手元
写真=iStock.com/Everyday better to do everything you love
※写真はイメージです

加算を受けられる条件の変更

本来、往診サービスに加算が算定されるには、厚生労働省が定める要件を満たしている必要があります。緊急往診加算の「緊急」とは、患者からの訴えにより、医師が速やかに往診しなければならないと判断した場合をいいます。「具体的には、往診の結果、急性心筋梗塞、脳血管障害、急性腹症等が予想される場合――中略――(小児の場合には)これに加えて、低体温、けいれん、意識障害、急性呼吸不全等が予想される場合)をいう。」とありますから、自ら医療機関に行ける症状の人に対する往診では加算が取れないのです。

ところが、従来は「医師が緊急性があると判断した」という事実が重く捉えられ、請求すれば加算がつきました。今回の改定では加算額自体が減るので、今までのやり方で往診サービスを行えば、収益を保てなくなります。急に具合が悪くなって診てもらう往診より、いつも受診しているかかりつけ医の機能を上げるためだと考えます。

診療報酬改定の内容が発表されたのは、2月14日でした。翌々日の16日には、「みてねコールドクター」が往診サービスの終了を発表。おそらく改定を予想し、準備していたのでしょう。2月29日には「キッズドクター」が順次終了、「ファストドクター」も患者さんの負担が必要になることを発表しました。みてねコールドクターは「今後の往診に関する診療報酬改定に伴う市場の変化を見据え」て往診を終了することを決定したと説明しています。診療を希望する人とその家族を「市場」と呼ぶのは、違和感があります。