お惣菜や加工食品などを使うと、「手抜き」と批判されがちだ。しかし、小児科医の森戸やすみさんは「お惣菜や加工食品が手作りより劣るというわけではないので、上手に利用すれば問題ない」という――。
お惣菜のイメージ
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食の「手抜き」は非難されがち

小さいお子さんがいると特に、毎日の食事の調理と片付けは大変ですね。今は昔と違って共働き家庭のほうが多く、仕事はもちろん、他の家事や子育ても両立しなくてはいけません。

うちの子どもたちはもう大きいので、私の帰宅までに夕食を作っておいてくれたり、私が料理をした際は鍋や食器を洗ってくれたりして、とても助かっています。でも、小さいときはとても大変でした。レトルト調味料や冷凍食品を使うこともあったし、お味噌汁や煮物などは2食分作り置きしておくこともありました。こうした便利な食品やお惣菜、外食などをうまく使うと少しはラクになりますよね。

ところが、便利な加工食品や調味料、お惣菜などを利用すると、なぜか「ラクをしている」「手抜きだ」「子どもがかわいそう」などと非難されがちです。同じ親でも父親は言われにくく、母親が標的になりやすいようです。実際、以前、X(旧Twitter)で、子連れの女性がスーパーでお惣菜のポテトサラダを買おうとしたところ、見知らぬ男性に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたという話が話題になりました。面と向かって意見されなくても、母親自身が自分で「手作りしないのはよくない」と罪悪感を持っている場合も多いのではないでしょうか。

家庭料理は普遍的なものではない

さて、そもそも「食事は母親が手作りするもの」という考え方は、普遍的なものでしょうか。海外には、屋台や店などで外食するのが一般的という国も少なくありません。ハムやチーズなどの切って出すだけの冷たい食べ物が主で、毎日決まったメニューという国もあります。私はYouTubeでいろいろな国の食事を見るのが好きなのですが、日本ほど栄養バランスや品数、彩りにまで気を配って、日々の食事を手作りしている国はなかなかないと思います。手間のかかり具合が違うのです。

すると「日本の伝統的な食文化は素晴らしい」なんて言われがちですが、そもそも母親が料理するのが昔からの文化なのかという点も疑問です。厚生労働省が「子どもが小さいうちは母親が家にいて世話をすべき」だという「三歳児神話」に合理的な根拠がないと否定したのが1998年。『増補 母性神話の罠』によると、三歳児神話のルーツは大正時代にあるようで、むしろ当初は声高に「母親が家で子どもの面倒を見るように」と言わないと定着しなかったそうです。

それまでの日本は、大家族で、地域ぐるみで子育てしていました。大勢で子育てしていたわけですから、母親ではない人が作った料理を食べることも少なくなかったでしょう。実際、母親が作らないといけないわけではありません。父親が作ってもいいし、他の人が作ってもいいし、買ってきてもいいのです。