最近、オーガニック給食を推進する動きがある。しかし、小児科医の森戸やすみさんによると「オーガニックだから健康にいいとは限らない。それよりも安全が確かめられている慣行農業の作物で十分に栄養のある給食を提供したほうがいいのでは」という――。
クリームシチューとサラダ、瓶牛乳とパンの給食
写真=iStock.com/Milatas
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参議院議員・川田龍平氏の炎上

「子どもの健康が大切なのでオーガニックの食品を選んでいます」、「有機栽培の野菜しか買いません」などと言う人は少なくないでしょう。ちなみに私が住んでいる地域の選挙公報には、議員に立候補している人が数人「オーガニック給食推進」を公約に掲げていました。

昨年12月7日には、立憲民主党の参議院議員である川田龍平氏が、X(旧Twitter)に「アメブロを投稿しました。『【お知らせ】オーガニックな食事で、子どもの発達障害の症状も改善!』」と投稿し、炎上しました。発達障害は生まれ持った特性のひとつです。また、ここで危険だと書かれている農薬・ネオニコチノイドの安全性は確認されているうえ、子どもの発達に関係しているという証拠もありません。オーガニックな食事で子どもの発達障害が改善するというのは、なんの根拠もない説だと言えます。

じつは、この川田氏は、昨年6月15日に立ち上げられた超党派による「オーガニック(有機)給食を全国に実現する議員連盟」の共同代表なのです。オーガニック・有機食品は、本当に子どもの健康によく、給食に導入すべきでしょうか。

オーガニックとは何なのか

まず、オーガニック・有機食品とはなんでしょう。オーガニック食品の定義は、農林水産省や厚生労働省のウェブサイトにありませんでしたが、有機食品のことです。農林水産省のウェブサイトには、有機農作物、有機加工食品、有機畜産物、有機飼料、有機藻類という分類があります。

この中の有機農産物は、「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本として、土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させるとともに、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した栽培管理方法を採用した場において生産すること」という文言があります。農林水産省の基準をクリアしていると、有機JASというマークを付けて販売することができます。海外から輸入されたものでも、表示の基準が定められています。ただ、それ以外のものが「オーガニック」と称されて販売されていることもあります。

一方、日本の慣行農業(通常の農業)で使われる農薬や化学肥料にも、安全性を確保するための厳格な決まりや基準があります。残留農薬も食品添加物も、多くの動物実験の結果わかった無毒性量を100分の1にし、一日摂取許容量(ADI)を算出しています。100分の1にするのは、動物とヒトとの違いや影響を受けやすい人がいることを考慮してのことです。安全係数といいます。つまり、慣行農業の作物も安全ですが、オーガニック食品はさらに環境に配慮した方法で作られた物ということになりますね。