自然なものが安全とは限らない
さて、オーガニック・有機食品が従来のものよりもおいしく、より安全で体によく、栄養たっぷりで、素晴らしいものだというイメージは世界的にあるようです。でも、実際には、おいしい、体によい、栄養価が高いということが保証されてはいません。有機栽培の一部を比較したところおいしさを感じやすいことがあるという研究はありますが、栄養価は差がありませんでした。
「割高になっても、おいしいくて安全なら、子どもにはやはりオーガニックなものをあげたい」と考える人がいるでしょう。でも、安全性も疑問です。農薬や化学肥料でなく、堆肥などの有機肥料を使って作る有機野菜で、健康被害の報告もあります。アメリカでは葉物野菜から、病原性大腸菌O157、ノロウイルス、サルモネラ、リステリア菌、サイクロスポラといったものが検出されているのです。
また植物は自らの身を守るために、虫や病気に対する自然の農薬を作ったり、動物に食べられないように有害な化学物質を作ったり、他の植物の生育を邪魔するアレロケミカルを出したりすることがあります。自然界にもさまざまな天然の毒があるんです。小麦につくカビ、ジャガイモの芽などはよく知られていますね。これらは取り除いたり、適切に調理したりしないと健康を害します。やはり、どう考えても「自然イコール安全」ではないのです。
ファクトに基づいて学ぶべき
じつは農薬、医薬品、食品添加物などの場合、とても詳細な安全性試験と担当省庁の注意深い審査が行われています。だから安全が担保されているのです。一方、自然の植物由来の栄養補助食品、機能性食品、天然の虫除け・病気よけの成分はほとんど試験をすることなく販売できます。ですから、どんな害があるのかわかりません。
米国食品医薬品局(FDA)の薬物評価研究センター所長や米国環境変異原学会長などを務めたDr. James T. MacGregor氏の『ナチュラルミステイク 食品安全の誤解を解く』という本は、天然の食品に関する誤解やリスクについて説明しています。ちなみにアメリカでも天然のものは安全で安心だという誤解があり、オーガニック食品は平均で47%高額だそうです。
食物や農業の安全について学ぶのは大切なことです。その際にはイメージではなく、ファクト(事実)に基づいて学びましょう。「AGRI FACT」というサイトは身近な食に対する疑問に答えてくれますし、Jミルクや精糖工業会など各種農畜産物の組合などのサイトも参考になります(※3、4)。
個人が自分の予算で何を選ぶかは自由ですが、公職に立候補する人がオーガニック給食を掲げていると、本当に子どものことを考えているのだろうかと疑問に思います。事実に基づかないイメージだけで語っているのではないでしょうか。健康に気を使っている方こそぜひ「なんとなくよさそう」「なんとなく怖い」ということではなく、正しい情報を得て判断していただけたらと思います。
※3 精糖工業会「よくある質問」
※4 一般社団法人Jミルク「牛乳の気になるウワサをスッキリ解決!」