※本稿は、西岡壱誠『教えない技術 「質問」で成績が上がる東大式コーチングメソッド』(星海社新書)の一部を再編集したものです。
子どもが遅刻しそうなときに、どう声をかけるべきか
この章では、生徒が受け身の姿勢で教わるのではなく学びを得るための重要な前提である、相手が学びに積極的になっている状態「コーチングレディ」についてお話ししたいと思います。
生徒自身が望んでいる状況をいかにして構築するか、ということです。
ビジネスコーチングで成果を上げている「PABLO」という会社で実践されており、100人以上のビジネスパーソンが実際に採用しているメソッドです。
本論の執筆にあたり、それを、今回学生や若年層向けに整理してみました。ですので、ここからの議論は本来はビジネスパーソンが実践していることを噛み砕いて説明したものです。
本論で論じるメソッドは、子供だけでなく大人にも応用できるという前提で聞いてもらえればと思います。
さて、コーチングレディについてお話しする前に、みなさんに一つ質問をしましょう。あなたが親御さんだとして、子供が朝になっても起きてこなくて、あと少しで遅刻しそうだと思ったら、その子を起こしますか?
まあ、大抵の親御さんは起こすと思います。「遅刻しちゃうよ!」と。でも、本当にそれって正しいのでしょうか?
「起こさない」ほうが子どものためになる
だって、そこで親御さんが朝起こしてしまうと、自分から朝起きるという行動をする可能性が消えてしまいますよね。人に言われないと、起こされないと、起きられないようになってしまいます。
だから本当は、子供の長期的な成長を考えるのであれば、「起こさない」という選択を取った方が子供にとっては学びになるのです。
「教えてあげない方が子供は伸びる」と拙著『教えない技術』で論じたとおり、この理屈は大体わかってもらえるかと思います。
さて、そしてその中でこの場合に重要なのは、「子供が望んでいるかどうか」です。たとえば、「明日って、朝早く起きなきゃならない?」と聞いて、子供が「うん」と答えたとしましょう。
そのときに、「じゃあ、君が8時に起きてこなかったら、起こした方がいい?」と聞くのです。そこで、もし「起こしてほしい」と答えるのであれば、起こしていいと思います。逆に、「自分で起きる」と言ったのなら、その前提を尊重するべきでしょう。朝起きてこなくても起こすべきではありませんし、見守るべきです。
この質問があるのとないのとでは、朝の親に対する対応は天と地ほどの差があると思います。朝起こしたときに、「うるさい!」と怒るのか、「ああ、起こしてくれてありがとう」と感謝するのか、同じことをやっているのに、前提条件一つで態度は180度変わってくるのです。