押し付け、脅しはNG

「勉強すれば幸せになれる可能性が高くなると思う」と言ってもいいと思いますが、「勉強しなければ幸せになれない」という「脅し」をするのは、自己決定から遠ざかってしまうので良くないと思います。

若干この本の趣旨と異なる部分があると感じる人もいるかもしれないのですが、選択をしてもらうことが重要でも、そもそも子供たちは選択肢を知らない場合があります。

自分にはどういう道があるか、どういう方法で幸せになれるのか、そういった展望は独力ではなかなか学べない部分があると思います。

選択肢だけは、提示してもいいのだと思います。しかし提示するだけで、その選択肢を無理やり選ばせてはいけません。無理に相手に「幸せになりたいだろ? ならこうしないと」と迫るのは強制力が働いてしまうので良くありません。

自宅で勉強する女の子
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです

「成長したいか?」

次の質問は、「成長したいか?」です。

「幸せになりたいか?」と同じような意味なのですが、相手の成長願望を聞くのです。

成長とは、いろんな意味を内包している言葉です。勉強ができるようになるのも、頭が良くなるのも、コミュニケーション能力が上がるのも、プレゼン力が上がるのも、また忍耐力が高まるのも、集中力が上がるのも、人に優しくできる能力が上がるのも、全て等しく「成長」です。

人は、根源的な欲求として、他人から求められたい、必要とされたいと願うことがあると思います。子供たちは、「社会に出てから人から評価されたいか?」と聞かれたら「イエス」と答える場合が多いです。そしてそのためには、何らかの部分で自分を成長させることが必要であると思います。

次の第3章では具体的なコーチングの手法の数々についてお話ししますが、生徒が「成長したい」と思っていることを再確認することによって、生徒が前のめりになって勉強するようになることがおわかりいただけるはずです。

そのために必要なのは「こういう成長をするために、こういうことをやってみない?」と聞くことです。