2030年に5Gから6Gへ移行することを見据えて実証実験が進むNTTのIOWNとは何か。作家で経済評論家の渡邉哲也氏は「IOWNは電力量が100分の1以下で通信速度は100倍以上にできる通信規格。日本の規格ではあるが、すでに世界中を巻き込みつつあり、ビジネスパーソンや投資家はその動きに注目しておいたほうがいい」という――。

※本稿は、渡邉哲也『世界と日本経済大予測2025-26』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

5Gから6Gへのテクノロジー変革のイメージ
写真=iStock.com/Pavel Muravev
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ビジネスパーソンが知っておくべき「Society5.0」の中身

半導体の問題を解決した先にあるのは、「Society5.0」の実現である。

内閣府が策定した第5期科学技術基本計画によれば、Society5.0は、「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を目指すもの」と説明されている。

日本がめざす未来社会の姿として、ビジネスパーソン、投資家が押さえておくべき必須キーワードだ。ちなみに「Society1.0」が狩猟社会で、「2.0」は農耕社会、「3.0」は工業社会、「4.0」は情報社会で、「Society5.0」はそれに続く、より発展した社会である。

2021年3月に閣議決定された第6期科学技術基本計画では「持続可能性と強靭性を備え、国民の安全と安心を確保するとともに、一人ひとりが多様な幸せ(well-being)を実現できる社会」と表現されている。

「Society4.0」はフィジカル空間からサイバー空間へのアクセスが可能となるものの、知識・情報の共有や連携が不十分であったり、必要な情報を調べて分析するリテラシーが高度に要求されたり、という問題点を抱えていた。

Society5.0を実現をするNTTのIOWN

「Society5.0」では、それをIoTで人とモノを繋げて新しい価値を生み出す、AIを使って必要な情報が瞬時に提供できる。乱暴な言い方をすれば、人間のために、情報を自由自在に活用できる便利な世の中がまもなく実現するのだ。

Society5.0を実現する手段の1つとしてIOWN(Innovative Optical and Wireless  Network=アイオン)計画がある。

これはNTTが進めているもので「光の技術を軸とした次世代情報通信基盤をもとに、よりスマートに一人ひとりが自分らしく生きられるWell-beingな世界の実現をめざす構想であり、取り組み」のこと。光半導体、生成AIなどを全てネットワーク化し、2030年をめどにスマートな社会を実現するというものだ。

高速通信の5Gによって通信技術が大幅に向上し、大量の情報のやり取りができるようになった。これに対して、IOWNでは光プロセッサ、光半導体を利用することで革命的に通信量を増大できる。

使用する電力量が100分の1以下なのに、通信速度はじつに100倍以上。超高速ネットワークを利用して全ての物流からリソースを組み合わせながらAIによって最適化していく。

こうした社会全体の最適化こそが、IOWN構想の核心部分だ。

とくに物流業界において、通信の超高速化は、ネットワークを効率的に動かすうえで欠かせない。大きなメリットがあるだろう。ほかにも自動車の自動運転、オーケストラ演奏のリアルタイム遠隔セッションの実現なども可能になる。