診療報酬が変われば医療が変わる
これまでも国は診療報酬改定によって、医療のあり方を変えてきました。抗菌薬(抗生物質)の不要な使用を減らしたのがいい例です。
以前、抗菌薬は、普通の風邪などの必要のないケースでもたくさん処方されていました。しかし、抗菌薬は漫然と服用してはいけない薬です。長期にわたって服用を続けると、特定の種類の抗菌薬や抗ウイルス薬等の抗微生物剤が効きにくくなる、または効かなくなる「薬剤耐性」ができてしまうためです。こうした耐性を持った細菌やウイルスが増えると、従来の薬が効かなくなり、本来なら治療できる人もできなくなります。
厚労省は、平成30年に「抗菌薬適正使用支援加算」、「小児抗菌薬適正使用支援加算」を作りました。抗菌薬が不要な状態のときに、抗菌薬を使用しないことで算定できます。この小児抗菌薬適正使用支援加算の導入により、外来での小児への抗菌薬投与は約2割も減少しました。
医療の適正利用は大切なこと
新型コロナウイルス感染症を診療する医療機関を増やしたのも、国の政策でした。新型コロナウイルス感染症が日本中に広がり始めた頃、検査機器・器材が少なかったこともあり、診療できる医療機関が限られていました。
そのため厚労省や自治体は、ウイルス検査機器を購入するための助成金を出したり、特例措置を出したりしました。また診療や検査料、入院に際しても診療報酬を高く設定したので、新型コロナウイルス感染症とその疑いのある人たちを診療する医療機関は増加。それでも第7波のときには発熱者が急増し、発熱外来を行うクリニックや病院に予約が取れなかったり、長時間待たされたりということがありましたが、この施策がなかったらもっとひどかったでしょう。
通常、医療者以外は、診療報酬改定を身近に感じることはないかもしれません。でも、私たちの生活に大きく関わることです。医薬品の処方のルールが変わることもあります。湿布薬と保湿薬の処方数に上限が設けられ、以前ほど一度にたくさんもらえなくなったことをご存じの方がいるでしょう。どちらも必要以上に処方してもらい、他の人にあげたり転売したりする人が問題になったのも大きな原因でした。
私たちが支払っている健康保険料も税金も有限です。誰もが安心して必要な医療を受けられるよう適正利用を考えていきましょう。