日本が「カナダ」から学ぶべきこと
米国トランプ政権の関税措置を受けた日米交渉が始まった。
前回、〈「日米同盟」を根本的に見直すタイミングが来た…「トランプ関税」が示した日本再興のために本当に必要なこと〉の記事でも述べたように、トランプ政権は、貿易、通貨、安保、産業、テクノロジーで米国が他国に負担を強いられてきたとの価値観を持っている。「相互関税」時代、日本はこれまでの米国依存から脱却し、より対等な関係に変えていく必要がある。
日本にとって、米国との関係は「守られることの安心」と「言いたいことを言えないもどかしさ」の両方を内包するものだ。戦後一貫して続いてきた日米同盟の恩恵は計り知れないが、時代は変わりつつある。米国とどう付き合うかを、より戦略的かつ主体的に考える時が来ている。本稿では、同じくG7であり米国の同盟国でもある「カナダの外交姿勢」を手がかりにしながら、日本がこれから進むべき方向性を提示する。
トランプ大統領「カナダは51番目の州に」発言の真意
カナダの総選挙が4月28日に行われる。その最大の争点は、カナダを「51番目の州」と呼ぶドナルド・トランプ米大統領への対応だろう。
トランプ大統領が「カナダは米国の51番目の州になるべきだ」などと語ったのは、一見突飛な発言に映る。しかし、その背景には、地政学、安全保障、資源、経済統合、さらには内政・外交パフォーマンスに至るまでの明確な戦略的意図がうかがえる。
まず、カナダを“取り込む”ことが米国にとってもたらす最も大きなメリットは、地政学的な安全保障圏の拡大である。北極海航路の管理権やNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)を通じた北方防衛の強化は、対ロシアや対中国を念頭に置く米国にとって極めて重要な課題だ。カナダを含む北米大陸全体を自らの“内側”に取り込めるならば、その防衛ラインは飛躍的に強固になる。
また、カナダは世界有数の資源大国であり、特にアルバータ州のオイルサンドをはじめとする化石燃料、さらに豊富な水資源や希少鉱物など、国家安全保障と直結する戦略資源の宝庫と言える。カナダとの貿易やサプライチェーンがすでに太く結ばれている米国だが、もし統合されれば、それらを“国内資源”として扱えるようになる。エネルギー安保戦略が最重要課題の一つである米国にとって、この利点は計り知れない。