単なるジョークや思いつきではない

そして、米中対立が長期化する中で、サプライチェーンの再構築を進める米国にとってカナダは「フレンド・ショアリング(友好国に限定したサプライチェーンの構築)」の中核パートナーである。自動車産業、航空機産業、林業など両国の産業構造は不可分に連なっており、完全に“取り込む”ことでさらに安定と強化を図りたいという思惑がある。トランプ氏独特の強引な表現の裏には、こうした深層の意図が透けて見える。

最後に、トランプ氏が国内向けに「米国拡張主義」を演出する意図を持っている点も見逃せない。支持基盤の保守層にとっては米国が世界を主導する物語が魅力的に映る。言葉の上では冗談めかしていても、政治パフォーマンスとして「米国が欲しいと言えば何でも手に入る」というイメージを示すこと自体が、トランプ流の政治手法なのだ。

こうして見ていくと、「カナダは米51番目の州に」という発言は決して単なるジョークや思いつきではない。資源、安全保障、サプライチェーンの最適化、国内政治向けのアピールを含む多層的戦略の表出であり、そこにはトランプ流の“交渉カード”としての挑発が込められているのである。