過激発言をくり返す「ミレニアル世代」の副大統領
トランプ米政権のJ.D.ヴァンス副大統領(40)の存在感が高まっている。
2025年2月、ヴァンス氏は副大統領就任後初の外遊としてフランス・ドイツを訪問。ミュンヘン安全保障会議に出席し、「欧州にとって最大の脅威はロシアでも中国でもなく欧州内部だ」「欧州の指導者は言論の自由を抑圧している」などと厳しい批判を展開した。
また、ホワイトハウスで行われた米ウクライナ首脳会談では、メディアの前でウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、「一度でも米国に『ありがとう』と言ったことがあるのか?」と激しく迫り、会談は一時緊迫した。
2つの象徴的な出来事の背景には、何があるのか。過激にも見えるヴァンス氏の言動を分析することは、トランプ政権の今後4年間を理解する上で非常に重要だと言える。
まずは全米で300万部を超える大ベストセラーとなったヴァンス氏の著書『ヒルビリー・エレジー(田舎者の哀歌)』から彼の生い立ちと価値観を読み解きたい。
300万部超の「大ベストセラー」に書かれた現実
ヴァンス氏は1984年、オハイオ州ミドルタウンの労働者階級の家庭に生まれた。2016年に発表した回想録『ヒルビリー・エレジー』には、彼が「ラストベルト地域(錆びた工業地帯)」で生まれ育った経験をもとに、経済的な衰退と社会的な崩壊がどれほど地域住民に影響を与えたかが書かれている。
同書には、次のような記述がある。
ヴァンス氏は、白人労働者階級に広がる絶望感と、それがどのように社会不安や薬物依存、犯罪に結びついているのかを詳細に記している。
貧困と低教育水準にとり囲まれた環境から抜け出すのは極めて困難であり、物理的、心理的な障壁は多い。ヴァンス氏自身は、家族や宗教が直面した困難を乗り越える支えになったとしている。ヴァンス氏の祖母は「自分に可能性がないと思ってはいけない」と励まし、それが彼の基盤となった。