「アメリカンドリーム」を体現する存在だが…

ヴァンス氏にとっての転機は、高校卒業後に海兵隊へ入隊したことだ。海兵隊での経験により自信をとり戻し、潜在能力を開花させた。除隊後はオハイオ州立大学に進学し、優秀な成績で卒業。さらに、名門・イェール大学のロースクールに進み、2013年に法務博士を取得。シリコンバレーでベンチャー投資家としても活躍した。

海兵隊時代のJ.D.ヴァンス米副大統領(2003年)
海兵隊時代のヴァンス氏(2003年)(写真=United States Marine Corps/PD US Marines/Wikimedia Commons

まさに「アメリカンドリーム」を体現するようなヴァンス氏だが、『ヒルビリー・エレジー』には次のように書いている。

人々は、富める者と貧しい者、教育を受けた者と受けていない者、上流階層と労働者階層というように、大きくふたつのグループに分けられる。そして、実際に私たちは、属する集団によって、ますますちがう世界を生きるようになっている。一方の集団からもう一方の集団への文化的移住者である私は、ふたつのグループのちがいにいまでははっきりと気づいている。ときどき私は、エリートたちに軽蔑のまなざしを向ける

労働者階級出身でありながらエリート教育を受けた経歴は、アメリカ社会の両極を知るものとして独自の視点を持つ下地となった。ヴァンス氏の政治思想の根底には、このような「忘れられた庶民の代弁者」という自己認識と、労働者階級を無視してきたエリート層への不信感がある。