オンライン診療や往診サービスの利用者が増えている。子どもの急病時にこれらの診療を利用してもいいのか。小児科医の森戸やすみさんは「それぞれのメリットとデメリットを知っておいたほうがいい」という――。
オンライン診療
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オンライン診療と往診サービスの実際

いよいよ暑さが厳しくなってきました。先月の記事でお伝えした通り、小児科外来は夏には空いていて冬に混雑するのが通例です。ところが、この夏はRSウイルス、溶連菌、ヒトメタニューモウイルス、アデノウイルスなどのさまざまな感染症が流行し、小児科外来は大混雑しました。

最近、ヘルパンギーナやインフルエンザはおさまってきましたが、いまだにRSウイルス感染症や溶連菌感染症は流行しています。また、新型コロナウイルス感染症もおさまっておらず、小児科の発熱外来は混雑しているようです。うちのクリニックも高熱のお子さんがたくさん受診され、発熱外来の予約枠を増やしました。近隣の小児科でも発熱外来はすぐにいっぱいになり、かかりつけ以外を探す保護者の方も多いようです。今は少しずつ落ち着きつつあるように見えますが、この先どのような感染状況になるのか、誰にもわかりません。

こうして小児科の予約を取ることが難しかったり、お子さんが夜間や休日に急に具合が悪くなったりすると、インターネット上で医師による診療が受けられる「オンライン診療」、医師が自宅を訪ねて診療する「往診サービス」を利用したいと思う方もいるでしょう。どちらも以前からありましたが、コロナ禍を機に利用者が増えています。しかし、それらの診療は通常の外来とは違います。どういう点が違うのかを知っておきましょう。

オンライン診療に適しているケース

オンライン診療とは、厚生労働省の定義によると「遠隔医療のうち、医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」のこと。つまり、患者さんが病院やクリニック、薬局に行かずに、スマホやパソコンなどの通信機器を使って、自宅で予約・診察・処方・決済を行う方法です。

最低限遵守すべき事項として「初診からのオンライン診療は、原則として『かかりつけの医師』が行うこと(注1)」、「急病急変患者については、原則として直接の対面による診療を行うこと(注2)」とあります。また「リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報通信手段を採用することにより、対面診療に代替し得る程度のものである必要があるため、チャットなどのみによる診療は認められません」とされている点に注意が必要です。

オンライン診療は、普段の様子を把握している「かかりつけ医」に慢性疾患を診てもらう場合に向いています。例えば、夜尿症や便秘などの疾患ですね。皮膚の様子をよく見られるような状態であれば、軽度のアトピー性皮膚炎、痤瘡(ニキビ)などもいいでしょう。親子ともに大変な思いをして受診しなくても済む、家庭での日常の様子がわかるというメリットもあり、必要に応じて対面診療にできるのであれば、オンラインのほうがいいときもありますね。

注1:ただし、既往歴、服薬歴、アレルギー歴等の他、症状から勘案して問診及び視診を補完するのに必要な医学的情報を過去の診療録、診療情報提供書、健康診断の結果、地域医療情報ネットワーク、お薬手帳、Personal Health Record等から把握でき、患者の症状と合わせて医師が可能と判断した場合にも実施できる(後者の場合、事前に得た情報を診療録に記載する必要がある)。
注2:なお、急病急変患者であっても、直接の対面による診療を行った後、患者の容態が安定した段階に至った際は、オンライン診療の適用を検討してもよい。