この危険性をもっと早く伝えるべきだった

小林製薬の紅麹サプリメントが引き起こしたと疑われる健康被害の報告が相次いでいる。現時点ではまだ完全解明されたとはいえないが、健康を害しさらに生命を落とされた方々には心からのお悔やみを申し上げたい。

また医師としてサプリメントの危険性と欺瞞性について認識してきたにもかかわらず、また文筆家として情報発信の手段を持っていたにもかかわらず、その発信があまりにも遅すぎたことを心からおわびしたい。

立ち入り検査のため小林製薬子会社の和歌山工場に入る厚生労働省職員=2024年3月31日午前、和歌山県紀の川市
写真=時事通信フォト
立ち入り検査のため小林製薬子会社の和歌山工場に入る厚生労働省職員=2024年3月31日午前、和歌山県紀の川市

というのは、私がサプリメントの危険性と欺瞞性について公式に発信したのは、ツイッター(現X)を除けば、先月上梓したばかりの『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』(角川新書)が初めてだったからである。

本書は、高齢者がいかに自分らしく人生最終コーナーを歩いていくかということについて、在宅医そして要介護の高齢両親を持つ当事者の視点から考察し、読者の皆さんとともに思考実験してみましょう、との主旨で書いたものである。

広告戦略に騙される高齢者が後を絶たない

老化は誰もが遅かれ早かれ直面する問題であるから、意識したことのない人のほうが稀といえるだろう。それゆえに、老化を「商売」に結びつけ、高齢者をカモにしてひともうけしようという業者たちが、昨今あとを絶たない。そして少なからぬ高齢者が、巧みな広告戦略にだまされて彼らの「カネ儲け」に引っかかってしまっている現状も、日々現場で診療するなかで目撃してきた。

木村知『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』(KADOKAWA)
木村知『大往生の作法 在宅医だからわかった人生最終コーナーの歩き方』(KADOKAWA)

本書では、こうした商売について「第四章 不安につけ込む商売にご用心」と一章分を割いて解説し注意喚起しているが、そこでは、高齢者がもっとも引っかかりやすいサプリメントを、まず一番に取り上げた。

本稿では、今回の事件を踏まえて本書で言及しなかった問題点も加筆しつつ、なぜサプリメントが商売として成立してしまっているのか、そもそもサプリメントは私たちに必要なのかという基本的認識に立ち返って考察してみたい。

太古の昔から「不老不死」は人類の見果てぬ夢であるといってもよいだろう。不可能であると頭ではわかっていても、何かしらアンチエイジングの「妙薬」はないかと探し求めてしまうのは、楊貴妃やクレオパトラにかぎったことではない。