サプリの「やってる感」に惑わされてはいけない

先日「最近不摂生だからサプリを使っている」という患者さんに遭遇した。読者の皆さんの中にも、そうした人がいるかもしれない。だがそれは本末転倒なのだ。不摂生ならば、それを改めなければデータは改善しない。サプリを飲んだところで変化するはずはないのである。

タバコの吸いすぎで咳とたんが出るからと、喫煙しながら咳止めと痰切りを飲むのと同じ。汚れた床を泥のついた雑巾で磨くようなものなのだ。大変失礼なもの言いかもしれないが、こういった人は「やってる感」で自分を納得させているだけにしか見えない。そしてそういった人たちは、残念ながらインチキ商品でカネ儲けを目論む業者に、すっかり利用されてしまっているのである。

葉酸や鉄のサプリメントを使うようにと産科医から指導されている妊婦さんは例外として、それ以外の自己判断でサプリメントを使っている人は、まずはいったんすべて止めてみてはいかがだろうか。止めたところで体調が悪くなることなどあり得ないから心配ご無用。むしろ身体にもお財布にも優しいはずだ。

今回の事件をきっかけに、一人でも多くの人に「サプリ事業」の危険性と欺瞞性に気づいてほしい。そしてそれを一事業者だけの責任に矮小化するのではなく、これまでこの事業を強力に後押ししてきた政府に対しても、この責任をウヤムヤにしてはならないことは言うまでもない。

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