「サプリと処方薬を併用してもいい?」医師の答えは

医療機関で処方される「本当の薬」は臨床現場で使用されるまでに治験をおこなった上で、国の認証を受け保険適用になっている。そうした保険適用の薬であっても、副作用や薬害が皆無でないことはご存じのとおりだ。それゆえに医師は処方するときに、その副作用について説明するし薬の飲み合わせについても考えるのだ。

一方のサプリメントはどうだ。誰からも有害性について説明されることなく自己責任で購入するものだ。

外来では患者さんから「こんなサプリメントを買ったのですが、今の処方されている薬と併用しても良いものでしょうか?」とよく聞かれる。そのとき私はどう答えるか。

「わかりません」だ。

冷たい答えだと思うだろうか? だが申し訳ないが仕方ない。効果も有害性も、誰にもなんら担保されていないシロモノについて、飲み合わせが大丈夫か否かなどと問われたところで、医師であっても判断などできるはずがないのである。

私は「わかりません」と答えた上で、サプリメントに広告でうたう効果を期待することはできないこと、過去に有害事象を経験したことなどを説明しつつ、医師としては使用をすすめるものではなく、むしろ積極的に使用しないほうが望ましいとの意見を伝えている。

タブレット端末を使って患者に説明する医師
写真=iStock.com/kazuma seki
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そもそもなぜ「機能性表示食品」が出回ったのか

医師の私がこのように言うと「そりゃそうでしょうね。処方薬でなくサプリメントを皆が買うようになってしまったら、医療機関は大ダメージでしょうからね」と揶揄する人もいるかもしれない。皮肉なことだが、その理屈は大外れではない。むしろそれが今回の問題の本丸なのではないかとさえ思えるのだ。

それはどういうことか。

もうすでにネットでは拡散されているが、今回問題となったサプリメントも属する「機能性表示食品」というカテゴリーは、第2次安倍政権が後押ししてできたものだ。この厳しい審査のない「ニセ薬制度」によって、サプリメント市場は今や数千億円から1兆円規模ともいわれている。国民の健康増進に見せかけた経済成長戦略、いや限られた企業への利益誘導政策といってもよい。

だが私はそれだけだとは考えていない。「できるだけ医療機関にかからずに、自己責任で“治療”しなさい」という、これこそ「社会保障抑制政策」「健康自己責任政策」の最もわかりやすい典型例なのである。

社会保障費を抑えるために高齢者の医療費を抑えたいという思惑が、財務省を中心として強固に根づいているのはご承知のとおりだ。そして「生活習慣病」の予防を叫びつつ、国民の健康にたいする関心を喚起し、メタボ健診も推進してきたわけだ。