健診にちょっと引っかかった人にはうってつけだが…

しかし、この健診でみつかってしまった高血圧や脂質異常、糖尿病の人たちが、そのまま医療機関にかかって投薬治療を受けはじめてしまったら、むしろ医療費が増えてしまう。医療費を抑制するつもりで導入したメタボ健診が、新たな患者を掘り起こすヤブヘビになってしまうのだ。

そこで活躍するのがトクホやサプリメントなのである。

「わざわざ医療機関を受診して、待合室で長時間待たされて、あげくに医者に『生活習慣を改めろ』などと不愉快な言葉を投げつけられて、薬を出されて、薬局でまた待たされて……健診でちょっと引っかかったくらいで、そんな面倒なことは勘弁してほしい」というのが多くの人の率直な気持ちではなかろうか。

そういう人が、ふらっと立ち寄ったコンビニで「糖や脂肪の吸収を穏やかにする」などと表示された飲料を目にしたら、多少高くても買い物カゴに入れてしまうかもしれない。テレビショッピングの「一日一粒、毎日続けて健康に! 初回は驚きの特別価格! 今すぐお電話を」との声につい電話番号をメモしてしまう人もいるだろう。

「病院で処方される薬剤のほうが安い」という事実

だがトクホにしろサプリにしろ、残念ながらその高い値段を支払ってでも得られる効果は期待できない。これらに保険適用になっている薬剤を凌駕する効果はあり得ない。もしその効果があるなら、それらのサプリはとっくに「薬」として保険収載されているはずだからだ。

そもそも値段を考えただけでも、サプリメントがインチキ商品であることが理解できてしまう。

今回問題となった「紅麹コレステヘルプ」をネットで買った場合、1カ月にかかる費用は約3000円だ。一方、医療機関で脂質異常症の診断のもとよく使われるLDLコレステロールを下げる薬剤(スタチン系)を処方された場合、医師による管理や指導を算定する医学管理料から処方箋料、薬局での調剤・薬剤料などをすべて込み込みとしても、3割負担の人でも1カ月で約2000円ほどなのである。

大きな錠剤2錠を飲もうとしているシニア女性
写真=iStock.com/AsiaVision
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先述したように、スタチン系薬剤にも副作用はある。だがその副作用の発見を見逃さないために、薬剤の処方に医師の診察がついているのである。かたやサプリメントは効果も安全性の審査もなければ、フォローアップもされず売りっぱなしだ。どちらが安全でコスパが良いかは考えるまでもなかろう。