なぜスマートフォンはAppleのiOS(iPhone)かGoogleのAndroidの2択なのか。アテネ大学教授のヤニス・バルファキスさんは「AppleとGoogleは、『デジタル版の地代』とも言える『タダ働きの仕組み』を作り出し、富を積み上げている」という――。
※本稿は、ヤニス・バルファキス『テクノ封建制』(集英社シリーズ・コモン)の一部を再編集したものです。
レントを超える利潤を追い求める大企業
ソニーは世界初の携帯型音楽デバイスであるウォークマンを発明したとき、莫大な利潤を得た。その後、模倣品による競争でソニーの利潤は減っていき、最後にアップルがiPodを引っさげて参入し、市場を独占した。反対に、市場競争はレント階級(地代などの権益=「レント」を生み出す資産の所有者)の味方になる。
たとえば、ジャックの所有するビルのある地区でほかの人が貧しい人を追い出し、再開発を進めていたとする。ジャックはなにもしなくてもレント(家賃)の相場が上がっていく。文字通り、寝ているあいだにジャックは金持ちになっていく。近隣の再開発が進み、企業がその地域にますます投資するようになると、さらにジャックの得るレントは上がる。
資本主義が栄えるのは、利潤がレントを凌駕している場合だ。生産労働と所有権を、それぞれ労働市場と株式市場を通して販売される商品へと変えることで、利潤はレントに対して歴史的な勝利を収めた。
それは単なる経済的な勝利ではない。レントは低俗な搾取の臭いを放っていたが、それに対して利潤は、勇敢な起業家が大きなリスクを取って市場の厳しい波風をくぐり抜けたことへの正統な報酬という道徳的な優位性を得た。