窓際から一念発起、社内専門家へ

以上のように新たな出世の潮流を眺めてきたが、残念ながら大多数のビジネスパーソンはどこかで出世は頭打ちになるのが現実である。では、そうなったときにどうすべきか。

1つの解は、専門性を武器に自分の存在価値を高めることであろう。この問題を考えるうえで参考になる人物を紹介したい。

大手化学メーカーに勤務する江藤真二さん(仮名、45歳)は30代後半で「監査部門にぶちこまれ」、早々に出世レースから脱落した。もとより関係の悪かった上司から、部下の間で発生したトラブルの責任を問われたのだった。

「社内では『最後の勤め場所』と言われている職場で、周囲は50代の人ばかり。30代後半の私が一番年下でしたから、それは落ち込みましたよ」

こんな職場にはいられないと転職活動を行い、実際に内定をもらったこともあったが、結局会社にとどまった。子供がまだ小さく、給与が大きく下がる事態は避けたかったからである。

鬱屈した日々を送っていた江藤さんだが、CIA(公認内部監査人)資格を取得したことで転機が訪れた。

「勉強会に参加して外部に専門家人脈ができるようになったんです。そこで内部監査の師匠になる人と巡り合い、コンサルティングの仕事を手伝ってその作法を教えてもらいました」

折しも企業の内部統制が重視されるようになり、監査部門の位置づけも変わってきた。何より、内部監査の業務そのものが江藤さんに向いていた。

「不正の兆候を発見すると血が騒ぎます。とくに偉い人の不正は(笑)。実際に役員を退任に追い込んだこともあります」

江藤さんは会社に勤めながら、専門性を高め人脈を広げてきた。定年まで現在の会社に勤めたいと考えているが、万一のときに備え独立などの選択肢も増やそうと努力している。

※すべて雑誌掲載当時

(上飯坂 真=撮影)
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