会社の評価の基準が変化するなか、どんな働き方が求められているのか、社員の悩みは尽きない。年代別「手放せない社員」の条件を明らかにする。
【佐々木常夫】10歳以下の子供時代を除けば、50代はちょうど人生の折り返し地点です。50歳あるいは55歳で人生の棚卸しをしてはいかがでしょう。40代は30代のときについた加速感が弱まっていないのであまり余裕がありません。50歳になると若干の余裕が出てきますから、ちょうどいい時期です。
自分の過去の仕事を冷静に振り返ってみる。腹を割ってとことん妻や子供と話し合ってみる。何年も会っていない友人や学生時代の恩師を訪ねたり、若い頃に感動した本を再読してみる。そうすると、自分とは何者なのか、残る人生で何をやりたいのか、が見えてきます。
これをやらずに定年を迎えると、多くの人が途方に暮れてしまいます。仕事という生きる目標がない状態ですから、別の目標を立てても張り合いがない。毎日暇で、やることがないのが苦痛になってしまう。会社を辞めてからではもう遅いのです。
20代と違って、55歳での棚卸しは夢も希望もなく、きつい現実だけを目の当たりにするだけかもしれない。そういう人には、この言葉を贈りたい。「運命は引き受けよう」と。
私の母親は19歳で父の家に嫁ぎ、4人の子供をもうけましたが、私が6歳のとき夫を亡くし、27歳で未亡人になりました。母がいつも言っていた言葉がそれで、いわば私の座右の銘です。もうひとつ、「頑張っても結果が出ないかもしれないが、頑張らなかったら結果が出るわけがないじゃないの」というのも母の口癖でした。
それが頭にあったから私も頑張れた。妻が病気になり自殺を図ろうとしても、自閉症の長男を含め、3人の子供の育児と家事を分担しなければならなくても、決して自暴自棄にならなかったのです。
若い人からはそう見えないかもしれませんが、その年代を過ごしてきた身から振り返ると、50代はまだまだ若いのです。人生を変えるきっかけはそこかしこに転がっている。どうせ歳だからと思うのは早すぎます。
私は人のキャリアは35歳で決まると思ってきました。人生観、仕事の進め方、余暇のすごし方、人とのコミュニケーションの取り方、いろいろなもので構成される「成長角度」が35歳で決まってしまい、その時点で角度が大きい人は後になっても小さい人に追い抜かれることはないということです。
ところが最近わかったのですが、これは万全の法則ではありません。40代後半から50代前半にかけて伸びる人もいます。ちょっと融通は利かないけれど、人生や仕事に対するひたむきさを持っている人です。そういう人は50代、60代になっても伸びていく。
私は67歳ですが(※雑誌掲載当時)、4年前まで本を書いたことも講演をしたこともありませんでした。最初の本は地獄の苦しみで書き、2冊目は何とかよちよち書き上げ、3冊目はさっと、4冊目はあっという間に書き上げました。60歳を過ぎても能力は伸びる。志あるところに道あり、です。