どんな仕事も20年で習熟のピーク

今まで述べてきたことを実践して50代になると、ほとんどの人の場合、高低の差はあれども山の頂に立っているはず。しかし、キャリア追求の旅はまだまだ終わらない。50代はむしろ新たなキャリアデザインが必要な時期なのである。

どんな仕事でも20年やり続けると習熟のピークに達し、そこから緩やかに下降し始めるといわれるが、何事にも例外がある。50代はこれを翻すことにチャレンジしてみよう。そのための3つの方法を伝授したい。

1つ目は、同じ仕事を一からやり直し、トッププレーヤーとして生涯現役を目指す方法だ。1つの山に登頂しても下山せず、尾根伝いに近隣の山々を踏破するイメージである。

具体的に、江戸時代の著名な絵師、葛飾北斎の例で説明しよう。彼は20歳から作品を発表し始め、90歳まで現役だった。その間、同じ人の作品とは思えないほど画風が変化している。絵師としての「型」を習得した後は、「北斎漫画」に代表される画風を確立した。しかし、北斎は画風も名前も捨ててしまう。

そして、次に目指した山頂が「版画」で、そこで生まれたものがご存じ「富嶽36景」である。それは68歳のときの作品といわれている。でも、それでは終わらなかった。再び画風を改めて「画狂老人卍」などと名乗り、現在のアニメの原型とも思える「肉筆画」という山頂に立つ。50歳から3つの山を極めた人、それが北斎なのだ。

どうか「勤め人には無理な話だ」などとは思わないでいただきたい。営業のプロとしてやってきて、55歳で頂点を極めた人がいるとしよう。そこでキャリアを終わりにするのではなく、今までやってきたことを基礎に置きながら、問題解決型で、コンサルティングの要素が強い営業に挑戦してみる。しかも別会社をつくり、経営もやってみることは充分可能で、そこから別の山が始まる。