「ホウレンソウ」で上司の信頼を獲得
入社してから30代前半までが、筏下りの時期である。この間は「仕事の出会い」と「人との出会い」という2つの出会いを大事にしよう。
仕事を通じて人はさまざまなことを学び、成長していく。また、職業生活に決定的な影響を与えてくれる上司や仲間がこの時期に必ず現れる。生涯の伴侶も見つかるかもしれない。そうした中から、自分は何ができるのか、何が得意で、何に価値を感じるのか、いろいろなことがわかってくる。
さらにこの時期は、仕事の土台となる基礎力を鍛える重要な時期でもある。基礎力は「対人能力」「対自己能力」「対課題能力」「処理力」「思考力」の5つに大別される。いずれも仕事を始めて1から身につけるものではなく、子供の頃からの積み上げによるものだ。特に大切なのが最初の3つの力だ。
「対人能力」は人間関係能力とも言い換えられる。どんな仕事に就いたとしても、必ず必要になる力だ。そのなかでも1番基礎的なものは、他者と親しくなる能力である。一緒に何事かを成し遂げる協働力や、人を引っ張っていく統率力もこれに含まれる。この統率力は小さな子供でも持っている。たとえば、生徒会長に自ら立候補するような子供に見られるような力である。
次の「対自己能力」は自己管理能力を指す。これは比較的新しい能力の概念で、最近、特に注目されるようになった。具体的には仕事のなかで日々発生してくる軋轢やストレスにうまく対処しながら、情緒や感情を安定させ、仕事をこなしていく力のことだ。自己効力感という言葉があるが、自らを有能と感じ、「きっとできる」という前向きの気持ちを維持し続ける力でもある。
見逃されがちだが、毎日規則正しく生活できるというのも立派な対自己能力の表れである。起床時間や就寝時間が定まらず、昼夜逆転の生活をしている人は人に迷惑をかけ、いい仕事ができないばかりか、ストレスが溜まりやすくなり、精神に異変を来す場合が多くなる。社会人失格といえよう。
「対課題能力」は、課題を見つけて必要な情報分析を行い、解決のためのシナリオを考え、それを実践していく力のこと。最近、その重要性が急速に高まっている。先の2つに比べて、社会に出てから開発される度合いが高い。
こうした3つの力を、30代前半までに身につけておくべきである。なぜなら、多くの企業では30代前半で次世代リーダーを選抜しており、こうした基礎力をどこまで身につけているかが、その見極めのポイントになっているからだ。最近は、人手不足ということもあって、この年代で転職する人が急速に増えているようだが、決して「目先の高給」に惑わされることなく、その転職が自分のキャリア形成に繋がるかどうか十分考えてからにしてほしい。
加えて、ぜひ身につけておきたい仕事の作法がある。それは上司への「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」である。これがうまくできない人は上司との円満な関係を築くことができず、その結果、正当に評価されることがない。ポイントは、事前の「相談」を欠かさず、途中経過の「連絡」をまめに行い、その後に結果をきちんと「報告」すること。そんな「ソウ・レン・ホウ」のステップを踏むことで上司が安心して仕事を任せてくれるようになり、強い信頼関係も構築していくことができる。