仕事するより早く家に帰りたい

今の安定した生活がずっと続くならいいのだが……。

さて、打って変わって「まったり系」社員の話も聞こう。大手メディア企業で広告営業をしている本間良明(仮名、25歳)は、入社3年目にしてぬるま湯生活を満喫している。

「広告収入は右肩下がりですが、部署に危機感はありません。今のところ収入もいいですよ。配偶者手当も含めて600万円です。社内結婚の妻もなぜか配偶者手当をもらっています」

2人合わせて1200万円。しかも、入社して約15年間は年功序列が続く慣習なので、がんばってもがんばらなくても差がつかない。

「大きな契約をとってきても、個人の力だと評価されにくいんです。社名の通りがいいし、代理店の努力の結果かもしれない。人事評価も最高や最低がつくことはめったにありません。みんな横並び。こんな職場が嫌で、入社2年目までは辞めたくて仕方なかった。でも、3年目になって結婚もして、『このままでもいいかな』と思い始めました。朱に交われば赤くなる、と言うじゃないですか」

適切な格言を持ち出すあたりに客観的な分析力を感じる。しかし、労働意欲は感じられない。

「同期の中には優秀なヤツもいますよ。マグレではなく新規案件を開拓しています。やろうと思えば、仕事は無限にあるんですねえ。でも、僕はそんなことより早く家に帰りたい」

遅くとも7時半には会社を出て、夫婦であれこれおしゃべりしながら夕食をとり、食後は映画を見たり本を読んだりして自宅でゆっくり過ごす。

翌朝は駅まで手をつないで仲良く出社。休日出勤などもってのほかだ。学生時代からのバンド活動も続けている。本間の優雅な日常である。

「子どもも早くほしいですね。地方転勤は断るつもりです。会社には僕の代わりがいくらでもいますが、家庭では代わりがいませんから」