顧客の経営にまで入り込みたい

リクルート 自動車カンパニー 
商品企画G・事業開発G GM 
加藤貴博 

1978年、北海道生まれ。2001年早稲田大学政治経済学部卒、リクルート入社。広告営業や求人誌、インターネットマーケティングの部署などを経て現職。

若々しいひたむきさがある志賀とは対照的に、ふてぶてしいまでの力強さを感じさせるのはリクルートの加藤貴博(32歳)だ。中古車情報誌「カーセンサー」などを手がける事業部で、商品企画など2つのグループを統括する。12人の部下を率いる若きマネジャーである。

「いわゆるプレーイングマネジャーではありません。やりたくても自らプレーする暇がない。メンバーが成果を出しやすい環境を用意することが、私の仕事です」

ただ、報酬や出世にはこだわらないところは志賀と似ている。

「お客さんは熱い思いを持っている経営者が多い。とにかくお役に立ちたい。単なる金儲けには興味がありません」

もちろん、実績も後からついてくる。社内MVPとして表彰されたことも少なくない。

そんな加藤にも不遇の時期があった。入社直後に配属された広告営業部門では「まったく売れない営業マン」だったのだ。

1つひとつの広告案件で、顧客企業の経営にまで踏み込んで考えてしまう。本質的なものにこだわりすぎるため、スピーディな営業活動ができなかった。だが、この骨太な思考力が商品企画や事業開発の業務で花開く。

「今でも大事にしているのは、仕事内容を勝手に自己規定しないことです。与えられた役割を果たすだけの仕事より、自分で課題設定をして戦略を立てて、それを実現していきたい。経営者と同じ目線まで自分を引き上げるよう努力しています」

2010年、子どもが生まれて「攻めばかりの人生」ではなくなったと、はにかむ加藤。ただし、社内結婚の妻には「あくまで仕事優先」だと理解を求めている。

「もちろん、20代の頃のような無茶な働き方はしませんよ。早く帰れるときはさっさと帰ります。メンバーたちは私の背中を見ながら働いている。『とにかく長く会社にいるのが美徳だ』とは思ってほしくありません」

とても32歳には見えない、思慮深いリーダーの言葉である。