会社の評価の基準が変化するなか、どんな働き方が求められているのか、社員の悩みは尽きない。年代別「手放せない社員」の条件を明らかにする。

【城繁幸】いまの20代は組織に依存する気持ちが弱く、個が自立している傾向が強い。30代も基本的に同じだが、もう少し組織への感情がウエットで、依存心がまだ残っている感じがする。

Joe's Labo代表取締役 
城 繁幸氏

といっても、毎年発表される就職人気ランキングを見れば一目瞭然だが、大企業人気は衰えるどころか、ますます高まっている。なぜこういう現象が起きるかというと、日本では大企業に就職するのが合理的な選択だからだ。

具体的にいうと、大手企業に入って出世し、何千万円と稼げる人はほんの一握りだが、ある年齢までは年功序列が守られるうえ、日本特有の強い解雇規制のおかげで滅多なことではクビにならないというメリットがある。つまり、ローリスク・ミドルリターンなのである。

ベンチャーにいったらどうか。当たれば年収数千万円、駄目だったら会社が潰れて路頭に迷うという、ハイリスク・ハイリターンの非情な世界が待っている。そういうところには身を置きたくないと考えるのが人情だろう。

こうした日本独特の雇用状況を踏まえると、最も賢い選択肢は、大企業および一部の優良中小企業に新卒で入ってスキルを磨いた後、頃合いを見て退職し、給料ではなく出来高払い制の、実力で勝負する世界に移行することだ。

その企業に留まって出世を目指すという選択肢も存在するが、日本企業の場合、出世の基準は曖昧なのであまりお勧めできない。もっとも、出世は求めずのんびり生きる道を選択するなら、辞めずに留まるのがベストだ。多数派が選ぶ道がこれだろう。

出来高払いの世界にも、独立して会社を興す、自営業者になる、年俸制の外資系に移る、といった3つの選択肢がある。そのためには、営業、経理、人事など何でもいいから社外で通用する力を高めておく。

世の中には育成ローテーションと称して、短期間に複数の部署を経験させる企業があるが、そういう企業はいくら大手でもすぐに辞めたほうがいい。営業を2年、人事を2年やっていたという人は外から評価されないからだ。営業力も人事のスキルも低いと見られ、転職が難しくなる。同じ在籍4年といっても、たとえば営業を4年間やった20代の人のほうが、次を比較的簡単に見つけられる。

「石の上にも3年」とはよく言ったもので、1つの仕事をとりあえず3年はやってみるべきだ。3年未満の仕事経験は転職市場ではキャリアとは見なされず、履歴書にも胸を張って記載できない。

もっとも例外はある。どうしてもその仕事が嫌で適性も感じられない、異動の可能性もゼロという状況に陥ったら、3年を待たず辞めるべきだ。いまは第二新卒という便利な市場もある。

もう1つの基準は35歳である。35歳を過ぎると市場が狭まってしまい、同じ転職をするにしても公募ではなく、ヘッドハンターの助けを借りる必要がある。偶然に身を委ねる機会が増してしまうのだ。