>>倉重英樹さんからのアドバイス

誰でも「やりたいこと」をやっているときが一番楽しい。しかし日本人の悪い癖なのだが、「やりたいことが何か」よりも「何をすべきか」を考えてしまい、なかなか結論が出せない。

やりたいことがわからない場合は、誰かから言われたこと、指示されたことをしっかりやる以外にない。特に20代は、言われた瞬間、嫌だなと思ってもぐっと我慢して完璧に遂行してみることをお勧めする。忍耐力や協調性を培っておかないと、長じて人を動かすリーダーにはなれないからだ。

あなたが「この人にはついていきたくない」という上司の下にいるなら、不幸であると同時にチャンスでもある。反面教師にすればよいのだ。若いうちは四の五の言わずに、すべてを学びのための機会ととらえてほしい。

一方、やりたいことがある人はまっしぐらに道を突き進めばいい。その代わり、失敗も多いはずだ。若い頃の失敗は必要だが、大切なのは素直であること。失敗の原因を素直に認めて反省できれば大きな糧になる。

やりたいことを実現するために組織は有用
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やりたいことを実現するために組織は有用

よく「やりたいことができないから組織を離れる」と簡単に言う人がいるが、非常にもったいないことだ。たとえば起業を志したとする。まず企画書をつくり、お金を出してくれそうな人を説得し、目途がついたら今度は人集めに多大なエネルギーが要る。以上のようなプロセスは、たとえうまくいっても実行までに数年はかかることを覚悟しなければならない。

ところが組織に属していれば事情は違う。いい企画書にはたいていすぐに予算がつくし、ふさわしい能力をもった人がアサインされる。やりたいと思ったことがすぐに実現する可能性が高いのだ。転職を繰り返している暇があるなら、上から命じられたことを早く確実にこなしつつ、自分がやりたいことを固め、それを発信する力と人を説得する力を養っておくべきだ。

この年代では、「投資の時間」の対象として多くを割くべきなのが勉強である。大切なのは効率を度外視することだ。たとえばマーケティングの勉強を思い立って、本屋に行ったとする。大きな書店に行けば関連本だけで何百冊もある。このとき、「どの本を読めば一番近道ができるか」と考えていると選択は堂々巡りとなり、手ぶらで帰る羽目になる。効率的に知識を頭に入れる方法を考えるのは答えのない答えを探すようなもの。そういうときは一冊でいい、必ず買って帰り、とにかく読み進むべきである。