メンバーのデスクまで行って隣に座り…

【山口】そんなつもりはもちろんありませんけど、メンバーの現状を把握して、私なりのアドバイスをしたいとは思っています。

【川村】なるほど。でも、それって唐突だと思いません? 「ちょっといい?」って呼びつけられるのって、メンバーからしたら、「なに言われるんだろ……」って、身構えちゃいますよね。

【山口】ああ、川村さんの言いたいことはわかりました。他の部下たちが見ている前では叱らないで、こっそり会議室とかに呼べっていうやつですか。

【川村】ハハハ。どこかのビジネス書にそう書いてありましたか。

【山口】……。じゃあ、川村さんは、どんなふうに声がけをしてたんですか?

【川村】そんな、たいした声がけはしていませんよ。ただ、山口さんとは2つ違いがあります。一つは、僕のデスクに呼びつけるのではなく、自らメンバーのデスクまで行って、隣に座ります。

オフィスにデスクが並ぶイメージ
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【山口】……なるほど、自分から行くってことですね。あと一つはなんですか? 私との違いって?

【川村】さっき、どうしてメンバーに声をかけるのかと僕が聞いたとき、山口さんはこう言いましたよね。「もちろん用があるから」って。

【山口】はい、それがなにか問題なんですか?

「山口、昼メシはどこで食べたの?」

【川村】僕の場合は、とくに用事がなくても、声をかけていましたから。

【山口】え? どういうことですか?

【川村】「おっ! 山口、今朝はいい顔してるなー。昨日なんかいいことあったの?」とか「山口、昼メシはどこで食べたの? おっ、天山飯店の肉野菜炒めか。いいねー。お母さん、元気だった? オレもあとで行こー」って感じかな。

【山口】ただの世間話に、なんの意味があるんですか?

【川村】意味? この会話に意味なんて必要ですか。そんなことより、用事があってもなくても、「いつも私はあなたを気に留めていますよ」という意思表示をすること自体が大切なんです。

【山口】うーん。そういうのって、むしろメンバーから、ウザいって思われそうなんですけど……。それ、しなきゃダメですか?

【川村】ハッハッハッ!

【山口】……。

【川村】ごめんなさい。ちょっとウケちゃいました。「しなきゃダメです?」って。別にしなくても、僕は困りませんよ。ただ、山口さんのメンバーたちの困っている現状が変わらないのは残念ですけど。

【山口】いやいや、困ってるのは私のほうなんですよ。だから、こうして相談に来てるんじゃないですか。

【川村】いえいえ、だから、あなた以上に困っているのは、メンバーだってことなんです。

【山口】え、どういうことです?