自由な人生を送るためには何が必要なのか。漫画家・文筆家のヤマザキマリさんは画家を目指していた20代の頃、イタリアで極貧生活を送った。「画家は貧乏が当然であり、お金がなくても自由であるに越したことはないと思っていた。しかし27歳のとき、自分を甘やかすのは終わりだと決意した」という――。
※本稿は、ヤマザキマリ『最後の講義 完全版 漫画家・文筆家・画家 ヤマザキマリ』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
画材すら買えない貧乏暮らし
フィレンツェでの11年についてはあまりエッセイにも書いていませんが、とにかく毎日が苦しくてつらかった記憶しかありません。
お金にならなくても必要なことだと信じて進んだ道ですが、そもそも人間はお金がなければ生きていけません。絵を勉強したところで、それでどうなるというのか。まったく先行きが見えない。母がオーケストラからもらっている給料は大したことはありませんでした。だから私への仕送りも、家賃を払って、食費を切り詰めてやっと生きていける程度。画材すら買えません。
当時、日本はバブルの最中でしたから、日本人観光客はすさまじい数でした。通訳やガイドが足りなかったために、旅行代理店の人が学校に私をスカウトにやってきたこともありました。
お金が欲しかったので、アルバイトは助かりましたが、私と同じくらいの年齢の若者もブランド品店などで湯水のようにお金を使い、買い付けに来た商人などは、一度に何千万円もの単位の商品を購入していきます。

