プライベートな時間を犠牲にせず、仕事で成果を出すにはどうすればいいか。デンマーク文化研究家の針貝有佳さんは「デンマーク人が効率的に働くのは、締切である午後4時の終了時刻に向けて、勤務時間を最大限有効に使おうとエンジンがかかるからだ。1日1回だけ一気に働くので、ランチ休憩は最長30分で切り上げる。それでも仕事が終わらなければその日の夜か翌日の早朝に片付けている」という――。
※本稿は、針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
プライベートライフを守る「覚悟」をもてるか
プライベートライフを守るためには、それなりの「覚悟」が必要だ。
片っ端から真面目に仕事に取り組んでいると、やってもやっても終わらない事態が発生する。何とか切りのいいところまで片を付けようとした結果、帰宅時間が遅くなり、プライベートライフがなくなってしまう。
そんな事態を避けるために必要なこと。
それはプライベートライフを守るという「覚悟」である。
デンマークでは、仕事を理由にプライベートを犠牲にすることが常態化すれば、簡単に離婚の危機に陥ってしまう。夫婦共働きで、家事育児も夫婦で力を合わせてすることが前提になっている社会だからだ。
どちらかの仕事が忙しいときは、夫婦で話し合って調整する。その代わり、忙しい時期を乗り越えたら、その分、家族と過ごす時間をたっぷりつくる。
子どもがいる家庭の真ん中にあるのは、いつも家族みんなで過ごす時間である。その傍らで、夫婦がお互いの仕事を尊重し合い、それぞれの仕事の波に合わせて労働時間を調整する。
仕事ばかりしていると、パートナーに別れを切り出されてしまう。デンマーク人男性のなかには、じつはそんな微かなプレッシャーを感じている人もいるかもしれない。
そう思って尋ねてみたのだが、私が取材した大半の男性は、パートナーからのプレッシャーというよりも、自分自身が家族との時間を大切にしたいから早く帰宅するのだと話してくれた。
プライベートライフを守るという覚悟があるからこそ、勤務時間を最大限有効に使う覚悟が生まれる。なんとしても仕事を効率良く終わらせる方法を考えざるを得なくなるのだ。