デンマークはなぜ世界一のワークライフバランスを実現できているのか。50歳になりデンマークで駐在生活を送ることになったある日本人は、午後5時にもなれば会社に残っているのは日本人の駐在員だけだったため、ライフスタイルの切り替えを余儀なくされた。毎晩、妻と娘と一緒に食卓を囲みながらその日の報告をし合うようになり、今までとは違う景色がみえ人生感が変わったという。デンマーク文化研究家の針貝有佳さんが書いた『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHP研究所)より紹介しよう――。

※本稿は、針貝有佳『デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

ビジネスライクではない「幸せな国」

世界ナンバーワンの国際競争力と電子政府を誇るデジタル化先進国というと、いかにもテキパキとしたビジネスライクな国で、便利な暮らしをしていると想像するかもしれない。

だが、デンマーク暮らしは、東京の生活よりも、ずっと静かで落ち着いている。24時間開いているコンビニもスーパーもほとんどなく、そもそも店の数が少なくて不便である。

郊外の住宅の庭にはリスが出没するし、ほんのちょっとドライブするだけで、馬や牛、鹿に遭遇する。

首都コペンハーゲンも緑豊かで、大きな公園がいくつもあり、春夏には人びとが水着で(たまに女性も上半身裸で)寝転がって日光浴をしている。

公園でくつろぐ家族
写真=iStock.com/studio-laska
※写真はイメージです

快晴で暖かい平日の午後3時頃、運河沿いに並んで座っておしゃべりをしたり、寝そべったりしている人たちを眺めていると、どう見ても「ビジネスライク」には見えない。

こういった光景を眺めて思い浮かべるのは、むしろ、デンマークの「幸せな国」という側面である。

何かに追われる様子もなく、芝生やウォーターフロントにゴロンと寝そべっているデンマーク人の姿を目にすると、「あぁ、これが『幸せな国』なのだな。豊かだなぁ」とつくづく思う。