「心地よさ」を大切に国際競争力ナンバーワン

フォーブスの調査によれば、2023年、コペンハーゲンは世界の主要な都市のなかで、ワークライフバランスを実現している都市ナンバーワンに選ばれた。フォーブスは、コペンハーゲンが1位に輝いた理由について以下のように述べている。

コペンハーゲンに暮らす人びとは「ヒュッゲ(心地良さ)」を大切にしている。自分や他人を大切にし、リラックスし、人生の喜びを感じることに時間を使っている。

また、職場もプライベートライフを尊重し、年間5週間の休暇とフレックスタイム制、夫婦合わせて52週間の育児休暇を提供している。

家で育児をする夫婦
写真=iStock.com/FlamingoImages
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この記述は、現地に暮らしていると、まさにそのとおりだと感じる。誰もが、自分と他人のプライベートを尊重しているのがデンマークだ。「人生で一番大事なことは、仕事ではないよね」という前提がそこにはある。

それでいて、国際競争力ナンバーワンなのだから、不思議である。

どうやら、プライベートの「ライフ」を犠牲にしなくても、「ワーク」で成果を出すことはできるようだ。

むしろ、デンマーク人は「ライフ」を大切にしているからこそ、フルに充電したエネルギーを使って「ワーク」に取り組めている。

いや、それだけではない。

さらに言えば、「ワーク」の目的が「ライフ」を充実させることにあるから、プライベートの時間を侵さず、短時間で最大限の成果を出せるのだ。

「ワーク」で得たリソースを「ライフ」に投入する

かつての私のように、プライベートを犠牲にして「こんなに頑張っているのに、なんで……」と思っている人がいたら、人生と仕事に対する根本的なアプローチの仕方が間違っているのかもしれない。

「ライフ」のために「ワーク」をするわけだから、「ワーク」のために「ライフ」が犠牲になっては本末転倒なのだ。それでは充電切れになって「ワーク」にも力が入らなくなってしまう。

「ワーク」はあくまでも「ライフ」を充実させるための手段であり、両者がトレードオフの関係になってはいけない。「ワーク」と「ライフ」はお互いをポジティブに補い合うような相互補完関係にしなければならないのだ。

「ライフ」を存分に楽しめるから、エネルギー満タンになって「ワーク」に取り組める。

「ワーク」の目的が、あくまでも「ライフ」の充実にあるから、短時間で最大限の成果を出せる。

そして、「ワーク」で得たリソース(お金・知識・スキル・人脈・休暇など)を、「ワーク」と「ライフ」をさらに充実させるために投入していくから、嬉しい好循環を生み出せる。

このポジティブなサイクルこそが、本当の意味での「ワークライフバランス」なのではないだろうか。

では、実際、夫婦共働きでワークライフバランスを実現しているデンマークの人びとはどんな暮らしを送っているのだろうか。ひとつ、エピソードをご紹介する。